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岸田文雄政権は昨年10月4日の発足から3カ月が経過し、初の新年を迎えた。この間、報道各社の世論調査で内閣支持率は堅調に推移。当初の「ご祝儀相場」から下落していくのが通常のパターンだが、岸田内閣はその逆で、支持率はじわりと上昇傾向にある。歴代政権はそれぞれ、支持層の特性に一定の偏りがあり、政権のイメージにも反映されていた。支持層の「岸田カラー」も少しずつ見えてきた。
産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査では、内閣支持率は10、11月調査がともに63・2%、12月調査は66・4%と推移しており、直近では発足時と比べて3・2ポイント上昇した。
メディアの特性や尋ね方により数字に差はあるが、他社の調査でも傾向は同様だ。発足直後と直近の内閣支持率を比べると、朝日新聞45%→49%、読売新聞56%→62%、毎日新聞49%→54%などと、いずれも上昇基調を示している。
政権の個性は支持層にも現れる。最近では、安倍晋三政権は「岩盤支持層」の存在が特徴だった。安倍氏の保守的な政治姿勢に共鳴する堅固な支持層が、割合にして3割程度、存在するといわれ、安全保障関連法の制定や「モリカケ」騒動など、政権はピンチに際しても内閣支持率が3割を割り込むことはまれだった。
仮に3割を切った場合でも、時間とともに回復する復元力も特徴で、7年8カ月の長期政権の源になった。安倍政権では一貫して、女性より男性の支持率が高い傾向も顕著だった。
菅義偉政権の1年は新型コロナウイルスの対応に追われ、支持率は下落の一途をたどった。「岩盤支持層」の存在は見えづらかったが、安倍政権との共通点として、比較的、若年層からの支持が厚かったことが挙げられる。
それは裏を返せば、高齢層からの支持の弱さでもある。産経・FNN合同世論調査のうち、比較が可能な昨年2~9月の年代別支持率の平均を見ると、最も高い18~29歳は54・1%だったのに対し、最も低い60代は40・4%と、約14ポイントの開きがあった。コロナにどの程度の脅威を感じるかの世代差も反映されていたとみられる。
岸田首相は昨年9月の党総裁選で、より保守的な政治信条を掲げる高市早苗氏らとの戦いを制し、自身が率いる岸田派(宏池会)として30年ぶりの政権を樹立した。宏池会は伝統的にリベラルな政治姿勢が特徴だ。そんな岸田政権を、安倍政権での「岩盤支持層」を含む保守層がどう迎えるかは注目されるポイントだった。
自民党支持層に限って内閣支持率を見ると、11月調査では90・2%、12月調査でも86・4%が岸田内閣を支持すると回答しており、菅政権下の調査(1~9月)で最高だった79・2%より高い。野党でも、日本維新の会の支持層は12月調査で59・3%が岸田内閣を支持するとしている。保守派の中には岸田政権のリベラル色を懸念する声も根強いが、現段階では保守層の支持は厚いといえる。
加えて12月調査では、無党派層も56・8%、立憲民主党の支持層ですら43・8%が、岸田内閣を支持すると回答している。このため保守からリベラルの一部まで、支持の裾野が広い印象となっている。
男女別の傾向はどうか。先の菅内閣では、内閣支持率は平均(1~9月調査)で男性47・2%、女性43・4%と、男性側の支持が強い傾向が安倍内閣と共通のカラーとなっていた。岸田政権は12月調査で男性63・8%に対し、女性68・8%。まだ明確な傾向を見るには早いが、女性側の支持が高くなっている。
菅政権は若年層に強く、高齢層で弱かった。それと比較した場合、岸田政権は年代の偏りが少ない「全世代型」の構造となっている。12月調査では70歳以上の支持率は70・5%と、年代別で最高を記録。最も若い18~29歳の69・3%が続いた。他は30代63・4%、40代66・0%、50代61・8%、60代64・5%だった。
岸田政権は、数字のうえではスムーズに滑り出したといってよい。ソフトで敵が少ないといわれる人柄を映し出したように、支持構造は全方位に広がっている。しかし国民の評価も新型コロナの感染状況次第だ。新変異株「オミクロン株」と「第6波」への対応が試練となる。
筆者:千葉倫之(産経新聞)
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2022年1月4日産経ニュース【政界徒然草】を転載しています