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岸田文雄首相によるウクライナの首都キーウへの電撃訪問を受け、今国会会期中(6月21日まで)の衆院解散の観測が与党内で強まった。関係正常化で合意した3月16日の日韓首脳会談後に内閣支持率が上昇し、ウクライナ訪問がさらなる追い風になるとの期待感が政権内にあるからだ。
世論調査で支持率向上
「ロシアによる侵略を一刻も早く止めなければならない。G7(先進7カ国)議長国のわが国はリーダーシップを発揮しなければならない」。23日に帰国した首相は同日の参院予算委員会に出席し、ウクライナ訪問の成果と決意を強調した。
首相は16日に日韓首脳会談に臨み、17日には記者会見で子育て世帯への支援強化策を打ち出した。直後の18、19両日の産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査では内閣支持率は45・9%。2月の前回調査から5・3ポイント増えた。
ウクライナ電撃訪問の翌22日、自民党幹部の一人は「支持率はもっと上がるんじゃないか。選挙に勝てるかどうかだけを考えれば、こんなチャンスはない」と反応した。想定可能な衆院選日程で最も早いのは、3月下旬の令和5年度予算成立後に解散し、衆参5選挙区補欠選挙などと同じ4月23日投開票となる。
6月中旬「可能性高まってきた」
ただ、首相周辺は「まだやることがある」と否定的だ。政府は3月末に少子化対策のたたき台を取りまとめ、4月1日にこども家庭庁を発足させる。広島市で5月19~21日に開くG7首脳会議(サミット)の準備も大詰めを迎える。
6月中旬になれば、すでに広島サミットは閉幕し、具体的な少子化対策を盛り込む経済財政運営の指針「骨太の方針」も閣議決定できそうだ。このため、国会会期末間際の解散は「可能性が高まってきた」(閣僚経験者)との声が出ている。ある政府高官も、今年後半は国内経済や国際金融市場の不透明感が増す可能性があると指摘し、「今年前半に衆院選に打って出た方がよいという判断になるかもしれない」と語る。
野党が会期末間際に内閣不信任決議案を提出し、岸田政権にノーを突き付ければ、首相が「国民の信を問う」と解散に踏み切る引き金になりうる。
筆者:田中一世(産経新聞)