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Miroku Waterfall in Takko, Aomori Prefecture.

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ニンニクの生産が盛んなことで知られる青森県田子(たっこ)町に、何とも慈悲深い名前を持つ名瀑(めいばく)がある。その名は「みろくの滝」。原生林にたたずむ神秘的な滝で、パワースポットとしても人気の景勝地だ。静寂の中、ゆっくりと流れる時間を楽しみながら、心身ともにリフレッシュできそうなひとときを堪能した。

 

みろくの滝の由来は実に物悲しい。室町時代の初め頃、この滝で断食修行中の「キュウ岳坊」と呼ばれるお坊さんが餓死しているのを見つけた村人が、弔うために慰霊碑を建てた。キュウ岳坊が弥勒菩薩を信仰していたことから、いつしかこの名が付いたという。

 

近くにはあずまややベンチもあり、ゆっくりと滝を眺めることができる=青森県田子町(福田徳行撮影)

 

こうした背景に思いをはせ、滝の近くにある駐車場から川のせせらぎと小鳥のさえずりを聞きながら、ブナやナラ、トチなどの広葉樹に囲まれた〝緑のトンネル〟を歩くこと約5分。高さ約30メートル、幅約20メートルの巨大な滝が目に飛び込んできた。

 

巨岩の威圧感と静かに流れ落ちる滝の音、水しぶき、緑の美しさに感動しながら、ゆっくりとした時間が流れるのを感じていると、何かに似ていると直感した。岩肌を流れる水と巨岩のコントラストが、人気キャラクター「スヌーピー」の横顔にそっくりなのだ。右側が耳、左側が鼻に見える姿がインターネット上で話題となり、最近では「スヌーピーの滝」とも呼ばれるようになった。

 

岩の形が「スヌーピー」の横顔に似ていることから、「スヌーピーの滝」とも呼ばれるみろくの滝=青森県田子町(福田徳行撮影)

 

巨大な岩肌を繊細で白い糸のような水が流れ落ちる姿がそうめんに似ていることから、地元では別名「そうめんの滝」とも呼ばれている。田子町商工振興課の梅内義幸さんによると、昔は夏場に実際に流しそうめんを楽しむ人がいたそうで、梅内さんも子供の頃に食べた一人だとか。「今は衛生上の観点から当然できませんが、良い思い出です」

 

田子町は青森県内でも夏場は比較的気温が高い地域だが、「マイナスイオン効果もあって、みろくの滝に来ると涼しいし、空気が澄んでいるので気持ちが安らぎ、力がみなぎる感じがする。帰省したら、ドライブがてら滝に来る人が多い」と同課の村木孝行さん。

 

川のせせらぎも訪れる人の心を癒してくれる=青森県田子町(福田徳行撮影)

 

町民にとって、みろくの滝はなくてはならない存在として根付いていることを改めて実感させられた。

 

新緑の春、紅葉で染まる秋、銀世界に覆われる冬と、季節の移り変わりとともに異なる〝顔〟を見せてくれる。日常の喧噪(けんそう)から離れ、冷涼ですがすがしい異空間が広がる夏に訪れてみる価値はありそうだ。

 

筆者:福田徳行(産経新聞)

 

■みろくの滝 青森県田子町関南来満山(らいまんやま)地内。東北新幹線八戸駅から青い森鉄道に乗り換え、三戸駅で下車。路線バスに乗り、田子町内でタクシーに乗り換え約40分。【問】田子町商工振興課(0179-20-7114)。このほか、町内にはニンニクの加工品販売やレストランがあるガーリックセンターや、昔の農村生活を再現した体験型観光の拠点「タプコプ創遊村」などの観光施設

 

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