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新型コロナウイルス感染拡大の影響で「お座敷」での飲食が激減し、大きなダメージを受けている新潟の花柳界。運営資金に困った芸妓(芸者)の養成・派遣会社がクラウドファンディング(CF)で支援を募ったところ、全国から支援が続々と集まり、早々に目標額を達成。目標額を2倍に引き上げた。同社支配人にCFの舞台裏を聞いた。
お座敷数が4割減
CFを実施しているのは国内初の株式会社の形態をとった芸妓養成・派遣会社「柳都振興」(新潟市中央区)。芸妓を社員として雇い、日本舞踊などの芸事や作法を身に付けさせ、お座敷に派遣している。現在、12人の芸妓が所属し、給料は月給制。彼女たちは、料亭などが立ち並ぶ同区の古町地区の地名をとって“古町芸妓(ふるまちげいぎ)”と呼ばれている。
現場を取り仕切っている棚橋幸(みゆき)支配人(53)によると、昨年3月から新型コロナの影響が出始め、全国に緊急事態宣言が出された同5月のお座敷数は例年の9割減と大きく落ち込んだ。その後も感染拡大の波が断続的に押し寄せてきたためお座敷数の回復は鈍く、現在も例年の4割程度にとどまる。
お座敷から得る“花代”が主な収入になっているだけに、新型コロナは同社の経営を直撃。「芸妓の雇用を守るため、雇用調整助成金も活用している」(棚橋さん)状況だ。
11日で1500万円
そこで、今年度中に必要な会社運営資金として1千万円をCFで募ることにした。期間は今月10日から6月30日までの52日間。目標額に達しない場合は全額、支援者に返金されるオール・オア・ナッシングと呼ばれる形式のCFだ。
同社は開始前、会員制交流サイト(SNS)のフェイスブックやインスタグラムを通じてCFを告知。さらに芸妓がひいきの客に支援を呼び掛けた。できる限りの準備はしたが「目標額を高く設定したため、どれだけ集めることができるのかすごく不安だった」と棚橋さんはいう。
ところがふたを開けてみると、開始からわずか11日間で約250人から1500万円ほどの支援が届き、目標額の1千万円をクリアした。棚橋さんによると「当初の目標額を早々に達成した場合は、2千万円に引き上げることになっていた」ため、5月20日に目標額を2倍に引き上げた。
ひいきでない人からも
支援の種類は、支援金額(3千~300万円)や返礼品の有無・内容によって14パターンある。中には、返礼品なしで300万円を支援している人もいる。
CFサイトの閲覧状況を都道府県別にみると、最も多いのは新潟で、それ以外では東京、大阪、神奈川、宮城、愛知も多いという。
「支援してくださった方の中には、お座敷のひいきのお客さまではない方々も多い。ご支援とあわせて、江戸時代から200年続く“古町芸妓”は新潟の財産なのでぜひ守ってくださいとの温かいメッセージを多くいただいた。本当に感謝しかない」と棚橋さん。
古町芸妓の歴史
日本一の米の生産地、新潟は、北前船の寄港地として知られ、江戸時代から日本海側最大の海上輸送拠点として栄えた。港から近い古町地区には料亭や茶屋が軒を連ね、政財界人や文人らが利用。そうした客を日本舞踊や長唄、伝統のお座敷遊びなどでもてなしていたのが古町芸妓だった。
京都・祇園、東京の新橋や赤坂などと並ぶ、日本を代表する花街の火を消してはいけない。そんな思いがCFから伝わってくる。
筆者:本田賢一(産経新聞)