Yoshimasa Hayashi Foreign Minister of Japan

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岸田内閣の林芳正新外相が就任と同時に日中友好議員連盟の会長辞任を表明した。この動きの背後には、米国側で中国共産党政権が対日政治工作のために同議員連盟を使うことへの警鐘が鳴らされてきた事実がある。

 

日中友好議員連盟は日米、日英、日韓などの議員交流組織と異なり、公式名称にあえて「友好」という用語を入れ、中国側から対日友好の主要窓口として期待されてきた。

 

同連盟は、日本側の会員は超党派の国会議員だが、中国側には同等の議員はいないという特殊な構造を持つ。中国側の「議員」は全国人民代表大会(略称・全人代)の代表だとされるが、共産党の独裁支配の中国では日本のような一般国民の選挙では選ばれず、共産党の指名や推薦に限られる。全人代で審議される法案は否決されない。

 

中国当局は1972年の日中国交樹立の直後から、日中友好議員連盟を他の友好組織と合わせて「中日友好七団体」と呼び、特別に重視してきた。日本側への政策や要求の売り込みにもまずこれら団体の協力を求め、高官の訪日の際も同団体代表との会見を優先してきた。

 

この七団体は日中友好協会▽日本国際貿易促進協会▽日中文化交流協会▽日中友好議員連盟▽日中経済協会▽日中協会▽日中友好会館-だが、議員連盟が圧倒的に影響力は大きいわけだ。

 

米国側でこの七団体への懸念や警戒が表明された経緯がある。最も具体的な指摘はワシントンの研究機関「ジェームスタウン財団」が2019年6月に発表した「日本での中国共産党の影響力作戦の調査」と題する報告書だった。

 

同報告書は日中友好議員連盟の名称を明記して、それら友好団体が中国共産党の統一戦線工作部などの対日政治工作に利用されることが多い、と警告していた。ただし日本側の議員らにその意識や意図があるかは不明だとしていた。

 

米国の国防総省国防情報局(DIA)が19年1月に作成した「中国の軍事力」と題する調査報告書も日中友好団体の役割への警告を発していた。中国人民解放軍が日本に対する「政治闘争」のために「中日友好七団体」を利用することがあると述べたのだ。中国政府が現実に対日工作では日本側のこの七団体をいかに重視し、依存するか、今年1月にも孔鉉佑(こう・げんゆう)駐日大使が林芳正議員をはじめ友好七団体の代表を招き、ビデオ会議を開いた。

 

在日中国大使館の公式サイトによると、この会議で孔大使は林氏らと新年のあいさつを交わし、日中両国の交流と協力を同意しあった。

 

しかも林氏は他の友好団体の代表とともに以下の言葉を述べたというのだ。

 

「北京冬季五輪に協力し、両国の世論基盤を改善して、友好事業を絶えず新たに発展させ、良好な雰囲気で22年の日中国交正常化50周年を迎えたい」

 

まさに中国への全面協力の言辞なのである。

 

北京五輪をめぐっては米国のバイデン政権が中国の人権弾圧などを理由に外交的ボイコットへと傾いてきた。日本にも同様の措置を求める声も出てきた。

 

そんな状況下でその北京五輪への友好的な協力をつい最近、中国側に伝えた林氏がいまや日本の外相とは、米国側でも気にかかることだろう。

 

筆者:古森義久(産経新聞ワシントン駐在客員特派員)

 

 

2021年11月23日付産経新聞【緯度経度】を転載しています

 

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