Japanese wine

Gold medal winners at the Japan Wine Competition on July 26 in Kofu City (© Sankei by Takashi Hirao)

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フランス産ワインの新酒「ボージョレ・ヌーボー」の解禁が迫る中、日本産ブドウを使い、国内で醸造した「日本ワイン」が存在感を高めている。繊細な味わいが特徴で、和食にも合うなどとして国内外で人気に。そんな日本ワインの生産量が多い都道府県は、東日本に集中している。平成30年に国がブランド表示を始めてから、5年目の秋。いまや東日本各県での隠れた「成長産業」になろうとしている。

 

 

「山梨ヌーボー」

 

「本家」の解禁に先立ち、今年も11月3日、「山梨ヌーボー」が解禁された。

 

山梨ヌーボーとは、県内で今年収穫されたブドウで、主に白ワインとなる品種「甲州」と、赤ワインとなる品種「マスカット・ベーリーA」を使って醸造した新酒ワインのこと。毎年11月3日に解禁される。

 

解禁に合わせ、5日には「勝フェス」こと「シャトー・メルシャン勝沼ワイナリーフェスティバル」が山梨県甲州市で開かれた。

 

横浜市から参加した会社員、石橋学さん(55)夫婦は「昨年初めて参加して楽しかったので、今回も参加した。毎年の恒例行事になりそう」と、さっそく山梨ヌーボーで乾杯。

 

勝フェスは、日本を代表するワイン銘醸地、勝沼で開催されるイベントだ。昭和49年に始まった前身のイベントから数えて45回目となる今年は、現地参加とオンライン参加で開催。現地参加のチケットは前年の5割増しにもかかわらず、発売から8日間で完売する人気ぶりだった。

 

Japanese wine
仕込み用のブドウを選別するシャトー・メルシャン勝沼ワイナリーのスタッフら=8月30日、山梨県甲州市(平尾孝撮影)

 

円安が追い風に

 

「日本ワイン」というブランド表示の歴史は浅い。

 

平成30年10月の「果実酒等の製品品質表示基準を定める件(国税庁告示第18号)」、いわゆる「ワイン法」によって規定された。

 

背景には、日本ワインが世界的なコンクールで入賞するなど、近年、品質への評価が高まってきたことがある。輸出を増やすためには、世界レベルの基準が必要ということで、ワイン法の規定ができ、メーカーやワイナリーなども盛り上げを図る。

 

Japanese wine
勝沼町でのワインフェスティバルで乾杯する参加者=11月5日、山梨県甲州市(平尾孝撮影)

 

国税庁の調査によると、日本ワインの出荷量は増加傾向で、令和2年度の推計値では輸入ワインを含む国内市場で5・4%を占めるまでになった。また、ボージョレ・ヌーボーは円安や物流コストの上昇により今年は「高根の花」に。代わって、国産のため為替の影響を受けない日本ワインに勝機が出てきた。

 

日本ワインの生産は、気候など栽培適地の関係から東日本に集中。国税庁の調査で、上位10道府県のうち7道県が東日本エリアだ。とりわけ山梨、長野、北海道の3道県で約7割を占め、4位の山形を含めると8割近くになる。

 

日本ワインが東日本の知られざる「成長産業」となっている実態が浮かぶ。

 

 

ノウハウを指南

 

国内外で人気の日本ワインだが、ブドウの栽培農家は高齢化が進み、担い手育成などが課題となっている。ワイナリーは大半が中小規模で異業種からの参入も多く、初心者がワインづくりを系統的に学べる場所が少ないのが現状という。

 

こうした状況を打開しようと、メルシャンは9月、新規参入の生産者を対象にコンサルティング事業を始めた。醸造技術や品質維持のノウハウを指南して高品質の商品生産や安定経営につなげ、日本ワインの裾野を広げたい考えだ。

 

岩手県花巻市や仙台市、宮城県南三陸町の4つのワイナリーで着手。同社の社員やOBらがワイナリーに出向き、ブドウの適切な収穫時期や仕込み手法などを指南するほか、オンラインでの相談にも応じる。

 

筆者:平尾孝(産経新聞)

 

 

【日本ワイン】 国内で収穫された国産ブドウを100%使って、国内で醸造したワイン。輸入果汁や輸入ワインを原料に国内でつくられた「国産ワイン」と区別するため、国税庁が平成30年10月からブランド表示を始めた。

 

 

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