6月29日、マドリードでポーランドのドゥダ大統領(右)と会談し
武器輸出などの「セールス外交」を行った韓国の尹錫悦大統領(聯合=共同)
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韓国は日本に対して、ことあるごとに軍事大国化とか軍国主義の復活といって非難してきた。過去の歴史からの連想だが、いわゆる反日言説の定番になってきた。直近でいえば、先の参議院選挙で自民党など改憲勢力が圧勝した際も、改憲可能な議席を確保したとして、韓国のメディアは一斉に日本の野党勢力と同じように「戦争する日本へ!」といって対日〝軍国主義妄想〟を書き立てていた。
近年よく目立つあの浮世離れ(?)した旭日旗アレルギー(拒否反応)もそうだ。海上自衛隊の自衛艦旗に使われ、世界各国で何も問題になっていないのに韓国だけが〝戦犯旗〟などという新造語まで作って非難を続けている。
民間による〝反日売名〟だけならともかく、ついに文在寅(ムン・ジェイン)前政権まで国際観艦式に日本を招きながら自衛艦旗は降ろせと難クセを付け、訪問を拒否されている(2018年10月)。日本に対する国家的侮辱に等しいが、軍国主義妄想のせいで国際的常識を平気で無視している。
ただ、韓国が〝非武装平和主義〟を理想とする日本の野党勢力と違うところは、自ら軍備拡張や武器輸出を積極的に進め世論の支持を得ていることだ。日本に対しては軍事大国・軍国主義警戒論を語りながら、自らは軍事大国(韓国では〝軍事強国〟という)化に精を出しているのだ。
武器製造・輸出に関しては「死の商人」という言葉があって、日本ではいわゆる平和主義者や進歩的知識人の間でよく使われた。武器の製造・輸出で金をもうけることは、戦争につながる非人道的な〝悪のビジネス〟というわけだ。日本社会にはそんな考え方もあって、今でも国家的に武器輸出には〝三原則〟などという足かせが存在し、輸出規制は厳しい。
日本人には武器・兵器アレルギーが結構、あるということだが、韓国の場合、それがまったくといって感じられない。北朝鮮と軍事的に対峙(たいじ)しているということや、国民皆兵で人びとが武器に慣れ親しんでいることがその背景と思われるが、このところ韓国は武器の対外輸出話で沸いており、日本に対する日ごろの〝反日妄想〟がますます空虚に感じられる。
最近の大きなニュースはポーランドへの大型兵器の巨額輸出。報道によると戦車980両、自走砲648門、軽攻撃機48機で総額は25兆ウォン(約2兆5千億円)に上り、先週、その1次分の契約が完了したといい、メディアは歓迎一色で伝えていた。
韓国はこのほか、潜水艦を含めすでに各種の兵器・武器を各国に輸出しているが、韓国紙は「輸出額で世界5位も近い」と誇り、海外メディアも「韓国、武器輸出のメジャーリーグ入り」と書いている。
韓国の国防予算は来年、総額で日本を超えるとみられている。人口比を考えれば日本の2倍以上ということになる。それに開発予算は世界2位で日本の3倍という数字もある。今や官民挙げて「兵器ビジネスを国策に」が掛け声になっているのだ。
そんな韓国から、日本に憲法改正の声があるからといって軍事大国化、軍国主義復活などと非難される筋合いはないだろう。中国、ロシア、北朝鮮に韓国も加え、日本の周辺はすべて〝軍事大国〟で埋まりつつある。そんな中で日本にだけ「今後とも非軍事的なままでいなさい」というのはやはりもう無理である。
筆者:黒田勝弘(産経新聞ソウル駐在客員論説委員)
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2022年9月2日付産経新聞【緯度経度】を転載しています