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米連邦政府の債務上限問題解決を受け、バブル経済崩壊後の最高値を更新し33年ぶりの高い水準となっている日経平均株価は、週明け以降も上昇基調を維持しそうだ。ただ、5月に3万円台に乗せてからの上昇ペースは速く、一服する局面が出てくるとの見方も。米国や中国の景気の先行きも不透明感が漂っており、海外の動きが日本株のリスク要因になる可能性もある。
市場は米国債のデフォルト(債務不履行)回避をすでに織り込んでいたとはいえ、3日に債務上限の効力を停止する法案が正式に成立したことで、好調な日本株のリスクは一つ消えた。
5月17日に約1年8カ月ぶりに3万円台を回復した日経平均株価の好調要因の一つは、海外投資家だ。4月に来日した米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏が日本株に注目。円安による手頃感も追い風となり、海外勢の買い越しが続いている。
第一生命経済研究所の藤代宏一主席エコノミストは「株価上昇は好調な企業決算と株主還元策が投資家の期待を満たしたことが大きい」と分析する。新型コロナウイルス禍からの回復で日本企業の業績が好調で、自社株買いや増配などの株主還元策に積極的な姿勢も買い材料となっている。
一方、今後は売却益を確定する売りが増えることも予想される。日本証券業協会の森田敏夫会長も「目先は高くなりすぎ、調整があってもおかしくない」と慎重な見方を示す。
株価の先行きについて、みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストは「リスクは海外にある。米国経済が悪化して後退局面に入ると、米国の金利低下で円高を招く恐れがある」と指摘する。株価を牽引する輸出企業の好決算は円安に支えられているためだ。
「ゼロコロナ」政策を終えた中国も景気回復が遅れている。日本総合研究所の石川智久上席主任研究員は「不動産バブル問題も解決していないので注意が必要」と警戒。また、ウクライナ情勢や台湾有事などもリスク要因だと指摘する。
日本株が買われている背景には、日本銀行の植田和男新総裁が大規模緩和を継続する姿勢を示し、投資家に安心感が広がったこともある。ただ、政策修正があった場合、投資家心理が急速に悪化する恐れもある。
上昇を続けるには、日本株の魅力を高めることも必要だ。東京証券取引所が求めている上場企業のPBR(株価純資産倍率)1倍割れの改善や、株主還元策の継続なども株価上昇の重要な要素になりそうだ。
筆者:黄金崎元、中村智隆(産経新聞)