Coronavirus Pandemic Second Wave in Europe 018

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欧州連合(EU)欧州委員会が7月14日に示した地球温暖化対策の計画にハイブリッド車(HV)を含めたガソリン車の新車販売を2035年に事実上禁止することも盛り込まれ、HV技術に強みがある日系自動車メーカーの欧州での電動車戦略は転換を迫られることになりそうだ。ただ、計画に対してはEU域内でも反発が出ており、今後の議論の行方に注目が集まっている。

 

欧州委が発表した政策では新車の二酸化炭素(CO2)排出量を30年には現行基準から55%削減し、35年にはゼロにするとされた。排出量をゼロにするには、燃費の良さで支持されてきたHVであっても販売できないとみられており、日本メーカーの戦略への影響は避けられない。

 

トヨタ自動車は25年までに15車種の電気自動車(EV)を販売するとしてラインアップの強化を図っているが、30年の世界市場での電動車販売台数目標である800万台のうち、CO2を排出しないEVと燃料電池車(FCV)は200万台にとどまる。欧州では30年に電動車比率100%を達成したい考えだが、EV・FCV比率でみると40%でしかない。

 

しかもこの目標の達成すら容易ではないとみられている。「現在の30倍の電池の供給量が必要になる」(長田准執行役員)ためで、欧州のEV・FCV比率を100%にするには、さらなる対応が必要だ。

 

日産自動車は30年代早期に欧州を含む主要市場で販売する新型車の全てをEVやHVといった電動車にする目標を掲げる。しかしHVも認めないEUの方針に従えば、これまで電動化の推進を担ってきた独自のHV技術「e-POWER(イーパワー)」は欧州で使命を終えることになる。

 

日産は今月、中国資本の電池メーカーと共同で、英国中部にEV向けの車載用電池工場を新設すると発表したばかり。今後もEVシフトの加速を迫られる中、広報担当者は「正式に決まったことではないので、なんともいえない」と困惑を隠せない様子だ。

 

ただ、EU域内の自動車業界では既に反発の声が出ている。ドイツ自動車工業会のミュラー会長もこれまで「技術革新に敵対する行為で、多くのサプライヤー(部品の供給企業)にとってほとんど実現不可能だ」と批判していた。

 

欧州委が示した計画は、今後、加盟国や欧州議会で討議される。日系自動車メーカー関係者は「乗用車だけでなく、トラックなどの商用車も対象になるのか」と今後の行方を注視する。

 

筆者:宇野貴文(産経新聞)

 

 

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