20220429 All Japan Judo Championship Tatsuru Saito 001

All Japan Judo Championships, Tatsuru Saito, winner at the championship competition on April 29, 2022, at the Nippon Budokan in Tokyo. (Pool photo.)

全日本柔道選手権で優勝を決めた斉藤立
=4月29日、東京・日本武道館(代表撮影)

~~

 

Japan Forward読者の皆さん、こんにちは。

 

私の住む日本では新型コロナウイルスの感染が落ち着きはじめ、スポーツ観戦も以前のように観客を入れて開催されるようになってきました。柔道もこの2年間は無観客で大会を行ってきましたが、観客を入れての実施に切り替わり始めています。

 

4月29日には、全日本柔道選手権大会が日本武道館(東京都)で3年ぶりに有観客で行われました。今月はこの全日本選手権で感じたことをお伝えしたいと思います。

 

全日本柔道選手権大会は1948年に第1回が開催された男子が対象の大会で、体重無差別で争われます。

 

現在、オリンピックや世界選手権では、体重別により試合が行われていますが、柔道はもともと体重区分のない無差別で行われていました。ですから、この全日本選手権はいわば柔道の原点とも言える大会であり、日本の柔道家であれば一度は出場してみたいと思う憧れの大会となっています。

 

私もこの大会に憧れていたひとりです。

 

1996年、高校3年のときに初出場を果たし、2008年に選手を退くまで12回出場、このうち3回優勝することができました。オリンピックや世界選手権とはまったく違う思い入れがあり、私にとっては全日本選手権で頂点に立たなければ、最強の柔道家とは言えないと考えていました。もちろん現在も多くの日本の選手たちがそう感じているでしょう。

 

全日本柔道選手権で延長戦の末に影浦心を破り初優勝を果たした斉藤立(上)=4月29日、日本武道館(代表撮影)

 

今年も、我こそは全日本の頂点に立ちたいという思いを持った47名の選手たちが出場し、斉藤立選手が初優勝を飾りました。

 

斉藤選手は若干20歳。今大会は2度目の出場でしたが、初戦から堂々たる試合ぶりで、全日本のタイトルを手にしたいという執念が全身からあふれ出ているようでした。

 

身長190cm、体重160kgという大きな身体を自在にコントロールできる類い稀な身体能力と、その体格に頼らない繊細な組み手や技などの技術力は非凡そのもので、非常にスケールの大きな柔道をします。

 

まだまだ成長の途上にありますが、これからの日本柔道を背負う人材であることに違いありません。

 

皆さん、「サイトウ タツル」という名前、ぜひ覚えておいてください。

 

全日本柔道選手権で初優勝の斉藤立(前列中央)は家族や関係者との記念撮影に笑顔を見せる。同左は兄の一郎さん、同右は母の三恵子さん =4月29日、東京・日本武道館(代表撮影)

 

さて今年の全日本選手権には、昨年の東京オリンピック代表たちも推薦枠で出場しました。中でも大会を盛り上げてくれたのが金メダリストのふたり。60kg級の髙藤直寿と73kg級の大野将平でした。

 

軽量である彼らにとって、90kg級以上の選手が多数出場する全日本選手権で勝つことは至難の業です。しかしながら、それでも彼らは出場しました。なぜか?

 

それは、自分より大きな相手に対し、どこまで自分の柔道が通用するか試してみたいという、柔道家としての素直な欲求に従ったからに違いありません。

 

ふたりは残念ながら初戦で敗れましたが、自分より大きな相手に果敢に立ち向かう彼らの試合は全日本選手権の魅力を存分に引き出してくれていたと思います。

 

このように体重の区別無く、さまざまな体型の者が集う全日本選手権は、やはり、唯一無二の魅力と価値があります。体格差を超え、それぞれが自分の特長を生かし、個性を発揮して挑む試合は、体重別の大会とはまったく違うロマンがあります。

 

柔道世界選手権に向けた強化合宿で、練習を見守る男子日本代表の鈴木桂治監督。後方右は井上康生強化副委員長 =4月15日午後、東京都多摩市の国士舘大(代表撮影)

 

この全日本選手権の魅力をもっともっと多くの人に知ってほしいと思います。以前のように海外旅行が自由にできるようになった暁には、ぜひ世界中からの観客をお迎えしたいと思います。実際、コロナ禍の前は、会場には多くの外国人の方の姿がありました。

 

全日本柔道連盟では、公式youtubeチャンネルで大会の動画を配信しています。ぜひこちらから試合の様子をご覧いただき、画面越しにその魅力を味わってください。

 

筆者:井上康生

 

この記事の英文記事を読む

 

 

 

コメントを残す