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ドイツ海軍のフリゲート艦「バイエルン」が11月5日、東京都江東区の東京国際クルーズターミナルに寄港した。独海軍艦艇が日本に寄港するのは約20年ぶり。独政府は昨年9月に「インド太平洋ガイドライン」を策定し、インド太平洋地域への関与強化を打ち出している。日本政府は価値観を共有するヨーロッパ主要国との連携を強固にし、覇権主義的な動きを強める中国を牽制(けんせい)したい考えだ。
岸信夫防衛相はバイエルンを視察後、独軍トップのツォルン連邦軍総監、ゲッツェ駐日大使と並んで記者団の取材に応じ、「今回の寄港はインド太平洋地域の平和と安定に積極的に貢献するというドイツの決意を示すもので、重要なターニングポイントになった」と強調した。
ゲッツェ氏も「バイエルンが帰路で南シナ海を航行し、ドイツと日本が航行の自由に向かって連携していることをアピールする」と応じた。
日独の防衛協力関係は今年に入って大きく進展した。3月には軍事やテロに関する機密の漏洩(ろうえい)を防ぐ情報保護協定が発効に至り、4月には初めての外務・防衛閣僚会合(2プラス2)がテレビ会議形式で実現した。
バイエルンの寄港は、こうした防衛協力関係の進展の上に実現したもので、岸氏は「さらなる防衛協力発展の足がかりを得た」と意気込む。
日本周辺の安全保障環境は世界的な関心事となっている。5月にフランス海軍の艦隊「ジャンヌ・ダルク」が、9月には英海軍の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群が日本に寄港し、ヨーロッパ主要国のプレゼンス(存在感)強化の動きも目立っている。
とはいえ、ドイツは中国との経済的な結びつきが強く、日本政府には「最終的にドイツは中国との間でバランスをとる」と見る向きもある。実際、バイエルンのインド太平洋地域への派遣に際しては、中国に寄港することも計画していた。
ところが、独側の打診にもかかわらず、中国政府は同艦の上海入港を拒否したという。バイエルンは、今月4日から関東南方で海上自衛隊と共同訓練を行った。日本政府関係者は「ドイツの振る舞いが中国の意に反しているということなのかもしれない」と語った。
筆者:大橋拓史(産経新聞)