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米国に拠点を置く国際問題専門ネット雑誌が、戦時中の慰安婦は性奴隷でなかったと主張する韓国人学者の論文をいったん掲載しながら、すぐに削除して謝罪し、性奴隷説に立つ別の学者の論文を掲載した。米ハーバード大学のラムザイヤー教授が学術誌の論文撤回を要求された出来事に続いて、慰安婦に関する今年2度目の学問の自由の侵害事件だ。
抗議に屈した編集部
ネット雑誌ディプロマットは11月14日、日韓両国でベストセラーになった「反日種族主義」の共同著者、李宇衍博士の論文「慰安婦問題と韓国の反日種族主義」を掲載した。この論文で李博士は「慰安婦という職業は『ハイリスク・ハイリターン』であり、巨額の金を得た者もしばしば見つかっている。雇用契約の期間終了後に朝鮮へ戻ったり、慰安婦として再就職したりする例も非常に多かった。 日常の自由制限は、戦場という環境から、軍人、軍属、看護婦等と同様であった。 結論を言えば、 慰安婦は現在の性労働者と基本的に同じ性労働者だった」と主張した。
すると、編集部に対して韓国と米国から抗議が入り、15日、編集部は李博士の論文を削除し、「週末に韓国人『慰安婦』に関連する不正確で没理性的な記述が含まれる寄稿論文を掲載した。この論文は我が社の編集基準を満たしておらず、内部的に問題を解決中だ。お詫びする」という謝罪文を載せた。
ラムザイヤー論文の学術誌掲載に反対した米ノースカロライナ州立大学歴史学部のデービッド・アンバラス教授はSNSで「ディプロマット編集部は(李宇衍論文の)掲載経緯と再発防止措置について説明せよ」と抗議を続けた。
同誌は18日、韓国に帰化した日本出身の学者で、竹島は韓国領、慰安婦は性奴隷という主張をしている保坂祐二氏の「2015年日韓『慰安婦』合意はなぜ破綻したのか」という論文を掲載し、19日、同誌の韓国人記者がSNSに「緊急に依頼したのに快諾してくれ、論文を書いてくれた保坂祐二教授に感謝する」「週末にしてしまった失敗は絶対に容認できないものだった」と投稿した。
学問の自由の侵害
以上が事実関係だ。抗議を受けたディプロマット誌は李宇衍論文を削除せず、それとは異なる意見の保坂論文を掲載して、論争の舞台を提供すべきだった。慰安婦問題に関して米国では学問の自由、言論の自由が著しく侵害されていると言わざるを得ない。
国基研は11月29日、「歴史認識に関する国際広報体制を強化せよ」という政策提言を発表したが、米国での歴史広報を官民が協力してより強化しなければならないと強調したい。
筆者:西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)
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国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第860回(2021年12月2日)を転載しています