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自民党が防衛費増額に伴う財源確保のため、政府が保有するNTT株の売却に向けた検討を本格化する。新たに設置するプロジェクトチーム(PT)の幹部が8月22日に会合を開き、月末にもPTで議論を始める。NTT法は政府による3分の1以上の株保有を義務付けており、売却には法改正が必要になる。経済安全保障との関係や情報通信分野の国際競争力強化などが論点になる。
「相当、長期の安定財源になる」
自民党の甘利明前幹事長は6日のフジテレビ番組で、NTT株の売却に関し、こう指摘した。一度に売却した場合、株価が暴落する恐れがあり、「20年など(時間を)かけて売っていかなければならない」とも語った。政府の保有割合は34・25%で、時価は約4・7兆円に上っている。
党のPTは、増税以外の防衛費の財源を検討する特命委員会(委員長・萩生田光一政調会長)の下に設置される。経済安保に精通する甘利氏が座長を務め、事務局長には昨年5月の経済安保推進法成立に尽力した小林鷹之前経済安保担当相が就任する見込みだ。
党の特命委は6月の岸田文雄首相への提言で、「防衛力強化の財源確保のために、政府が保有する必要性について改めて議論すべきだ」として、NTT株を挙げた。完全民営化も含め、法改正を早急に検討すべきだとも主張した。
一方、高市早苗経済安保担当相は8月1日の記者会見で、中国などを念頭に「(株を)懸念国に全部買い上げられてしまうというような観点を踏まえた議論を期待する」と述べた。
こうした懸念について、甘利氏は、外国人投資家の出資を制限する外為法で対応できるとの認識を示す。むしろ、現行のNTT法はNTTに対し、電気通信技術に関する研究成果の開示義務を定めており、技術流出などの面で経済安保上の問題が指摘される。
インターネットが普及し、海外IT大手が存在感を増す中、全国で電話サービスを提供する義務などがNTTの競争力強化の重しになっているとの見方も根強い。NTTの島田明社長は「(同法は)今の時代にマッチしていない部分もある」と認める。
自民の小林氏はSNSで「わが国の情報通信企業が世界と勝負できる環境を整えることが大切だ」として、NTT株の売却収入は防衛財源に加え、先端IT技術の研究開発に充てる必要性にも言及する。