~~
自民党が4月28日投開票の衆院3補欠選挙で島根1区を落とし、不戦敗を含め全敗が確実になったことで、党内で「岸田文雄首相(自民総裁)では選挙の顔にならない」との声が強まりそうだ。とはいえ有力なポスト岸田候補も不在で、「岸田降ろし」の動きがすぐに本格化する気配は薄い。
自民が過去1度も議席を失ったことのない島根1区で敗れるという状況は、派閥パーティー収入不記載事件による逆風の強さを再認識させた。しかし自民執行部の一人は28日、「初めから厳しい戦いだとわかっていた。首相はやめろという話にはならない」との見通しを語った。
内閣支持率が低迷する中、補選の結果を待つまでもなく「6月23日までの今国会会期中の衆院解散」を主張する政権幹部はいない。
複数の自民幹部や議員が「解散しなくても総裁選の勝機はある」との認識を首相や首相周辺に伝えている。幹部の一人は「岸田首相の他にいない」と語る。
首相に対抗する「非主流派」のキーパーソンは菅義偉前首相だ。
前回総裁選で2位になった河野太郎デジタル相を支援した。しかし派閥解消論者の菅氏は今、麻生派に所属し続ける河野氏に不満を持っているとされる。河野氏自身、政府のエネルギー関連会議の資料に中国国営企業のロゴの透かしが入っていた問題で失速した。
菅氏周辺では小泉進次郎元環境相、加藤勝信元官房長官らの名前が候補に浮上するが、具体的な動きは見せていない。
前回3位の高市早苗経済安全保障担当相も後ろ盾の安倍晋三元首相が死去し、厳しくなった。
非主流派の有力議員は「首相を引きずりおろすような足の引っ張り合いは党全体にマイナスだ。9月まで待って総裁選で堂々と戦えばいい」と語る。解散は総裁選後との観測が強まる中、「今動く必要はない」とのムードが漂っている。
筆者:田中一世(産経新聞)