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ごみ処理施設のプラント設計などを手がける「島産業」(香川県観音寺市)が昨年発売した家庭用の生ごみ処理機「Paris Paris Cue(パリパリキュー)」は温風で生ごみを乾燥させ、悪臭の発生を抑える。キッチンになじむ外観や機能性が評価され、世界的なデザイン賞を受賞し、国内を代表する賞にも輝いた。シリーズの累計販売台数が10万台超という生ごみ減量乾燥機。支持される秘密を探った。
重さは5分の1に
パリパリキューで乾燥させたキャベツやニンジンなどの野菜は軽く、力を入れて握りしめると枯れ葉のように崩れそうな感触。鼻を近づけると香ばしいにおいがした。商品名の「パリパリ」は物が砕ける音、「キュー」は落ち葉を踏みしめる音にちなんだという。
使い方は簡単だ。生ごみを集めたバスケットを、上部の蓋を開けて内部にセットし、スイッチを押すだけ。生ごみに温風を吹き付け、数時間で乾燥。重さはおよそ5分の1になり、かさも減る。腐らないので嫌な臭いに悩まされることもなく、虫も寄ってこない。処理後は可燃ごみとして出すほか、家庭菜園の肥料にも使える。
同社商品開発グループ次長の藤田晃男さんは「4月の発売以来、想定の300%以上の売れ行き」と明かす。地元の観音寺市のふるさと納税の返礼品にも採用された。
デザイン賞総なめ
臭い、虫、水分といった生ごみにまつわる問題を解消するだけでなく、外観も好調さを支えているようだ。コンパクトな大きさで、白を基調としたシンプルなデザイン。キッチンで炊飯器や電子レンジの隣に並んでいても違和感のないたたずまいが特徴だ。
デザインや機能性が評価され、世界的に知られる「iFデザインアワード2020」や「Red Dotデザインアワード2020」に選ばれたほか、「GERMANデザインアワード2021」特別賞を獲得。国内を代表する「グッドデザイン賞2020」も受賞した。
デザインを担当するのは社内の開発メンバー数人と社長。試作を繰り返し、形やカラーリングを決める。藤田さんは「商品の存在価値を認めてもらった。社内で考え製作した商品が評価されたことは、開発、販売の自信につながる」と受け止める。
自治体の悩みきっかけ
同社はもともと、ごみ処理施設やリサイクル施設のプラント設計や施工、保守を主な業務としている。その際、自治体の担当者から、焼却炉の老朽化、生ごみの減量化が進まないといった課題を聞き、「何とかしたい」と生ごみ減量乾燥機の開発に乗り出した。
従来、家庭で生ごみを処理するには、庭や畑に設置したコンポスト(容器)で発酵させ堆肥にする、電気を使って微生物の力で分解する、乾燥させる-といった選択肢があったが、処理時の臭いや音などがネックで普及が進まなかったという。
生ごみの重量の大半を占めるのは水分。同社は温風で乾燥させる方法を採用し、商品化した。平成25年に最初の「パリパリキューブ」を発売。その後、円筒形の「パリパリキューブライトアルファ」を送り出した。
近年は、ごみの減量化を目指して生ごみ処理機の購入費を助成し、導入を促す自治体も増加。それが追い風となり、シリーズ累計の販売台数は発売から7年で10万台を突破した。それでも普及率はわずかとみられ、同社は「まだまだ伸びしろは大きい。生活をより良くし、ごみの減量につなげたい」としている。