アニメ映画「ONE PIECE FILM RED」の
興行収入が100億円を突破した際の画像
(©尾田栄一郎/2022「ワンピース」製作委員会)
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アニメーション映画「ONE PIECE FILM RED」(谷口悟朗監督)の興行収入が、150億円を突破、国内の歴代興行成績11位(9月25日現在157億円、興行通信社調べ)に躍り出た。配給元の映画大手、東映にとっては創立71年で初めての大台突破。人気の秘密を探る。
同映画は、漫画家、尾田栄一郎の「ONE PIECE」が原作。単行本が103巻、発行5億部を超えるモンスター級の人気漫画だ。
すでにこれまでに14作の映画が作られていたが、今回は7月に「週刊少年ジャンプ」での連載が25周年を迎え、ついに最終章に突入した、まさに佳境での映画化となった。
8月6日に公開され、最初の週末(6、7日)で興行収入22・5億円をたたき出すロケットスタートを切ると、その後もペースは落ちず、公開10日目で70億円を突破。12作目「ONE PIECE FILM Z」(平成24年)の自己記録(68・7億円)を更新した。そして、20日目の同25日、興収100億円を突破した。
「千と千尋の神隠し」(13年、宮崎駿監督)の25日目を抜き、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」(令和2年、外崎春雄監督)の10日目に次ぐ歴代2位のスピード達成だ。
東映にとって昭和26年の創立以来、初の100億円突破。これまでは「天と地と」(平成2年、角川春樹監督)の92億円が最高だった。
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好調な興行成績。経済解説者で映画評論家の細野真宏さんは、公開前から「100億円は堅い」と予測していた。
「何といっても作品の完成度が高い。漫画連載も佳境で、原作者の尾田さんを筆頭に映画の製作関係者の気合の入り方が違っている。すべてを根本から見直し本気モードで来たと感じさせた」と説明する。
細野さんは、〝本気〟の具体例の一つとして「作品を広い客層に届ける点を重視し、製作委員会に大手広告代理店を一気に2社も加えた」ことを挙げる。
その結果、「商品やサービスなどとのタイアップも一業種で複数社と連携する異例の拡充がはかられ、映画の認知度向上に大きな効果を発揮した」という。
細野さんは、有力な集客施策である「入場者プレゼント」にも注目。尾田さんの描き下ろしを含む単行本を初めて2種類も制作するなど、「製作委員会の1社で原作の出版元でもある集英社の本気の表れを感じます。死角が見えにくいほど製作委員会の全社が機能している異例の作品」と評する。
また、細野さんは、若者に人気の歌手、Ado(アド)が劇中の歌を担当し、「音楽映画」の要素が強いことで、「大音響で楽しみたい劇場体感型映画になり、リピーターを生み出している」とも指摘する。
映画ジャーナリストの大高宏雄さんは、「もともと人気の長期シリーズ。過去作の実績50億~60億円を見てもポテンシャルはあった」とした上で、「映画館では若い観客が目立った。新しい世代の観客の取り込みに成功し、集客力がパワーアップしたのだろう」との見方を示す。
大高さんは、インターネット上で作品をめぐって賛否両論となっている点にも注目。「最近は、SNSで賛否が対立すると『自分で確認しよう』と映画館に出向く観客が現れる傾向が見られる。この作品も、ネットで百家争鳴なのが奏功したのでは」とも。
大高さんは、「一方で、ミニシアターには客足が戻らずヒットが出ていない。映画興行全体で見れば、これは不均衡で、いままさに新型コロナウイルス禍の影響が如実に現れ始めているということもできそうだ」と付け加える。
果たして「ONE PIECE」の興収は、どこまで伸びるのか。
大高さんは、まだ「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」のような〝社会現象〟にはなっていないとした上で、「100億円を超えた後の予測は難しいものだが、130億円台には届くのでは」と見込んでいた。
公開前に100億円突破を予測していた細野さんは、「今後の入場者プレゼントの内容など変動要因はある」としながらも「180億~200億円台。興収歴代ベスト10に食い込むのではないか」と話している。
筆者:石井健(産経新聞)
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あらすじ
素性を隠した歌姫、ウタが初めて人前に立つライブが開かれる。会場には、ルフィ率いる麦わらの一味を含む海賊や海軍が集結。しかしそこで、ウタに関する衝撃の事実が発覚する。
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2022年9月7日付産経新聞【メディアインサイド】を最新情報に更新して転載しています