菅義偉(すが・よしひで)首相は26日、国連総会の一般討論演説をビデオ録画方式で行い、来年の東京五輪・パラリンピックについて、人類が疫病に打ち勝った証しとする決意を表明した。また、北朝鮮による拉致問題を解決するため、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と条件を付けず会談する意向を示した。
首相が就任後に多国間外交に参加するのは初めて。
首相は新型コロナウイルスの治療薬、ワクチンについて「途上国を含めた公平なアクセスの確保を全面的に支援していく」と述べた。先進国が開発したワクチンの特許を共同管理し、途上国にも安価かつ迅速に供給する「特許権プール」の必要性も強調した。
首相はまた、東南アジア諸国連合(ASEAN)の感染症対策センター、アフリカの疾病予防管理センターを支援する意向も表明。水道インフラや衛生支援のための資金1700億円を拠出する方針を示した。
新型コロナで打撃を受けた経済を支えるため、2年間で最大5千億円の円借款を供与する考えも明らかにした。また、自由貿易を発展させることを目的に、世界貿易機関(WTO)の改革や、各国との経済連携協定(EPA)の締結を進める意向も示した。
一方、首相は多国間主義の重要性を指摘し、日本の常任理事国入りを念頭に国連安全保障理事会の改革を訴えた。国連平和維持活動(PKO)の要員教育に取り組むと述べ、法の支配を重視する「自由で開かれたインド太平洋」を推進するとも語った。