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文化審議会は7月16日、伊藤若冲(じゃくちゅう)の「絹本著色動植綵絵(けんぽんちゃくしょくどうしょくさいえ)」や元寇(げんこう)を描いた「紙本著色蒙古襲来絵詞(しほんちゃくしょくもうこしゅうらいえことば)」など、かつては皇室が所有し、現在は国の財産として皇居・東御苑にある三の丸尚蔵館が収蔵する5件を国宝に指定するよう、萩生田光一文部科学相に答申した。これまで同館収蔵の美術品は文化財保護法に基づく文化財指定の対象外で、初めての指定となる。
同館には皇室ゆかりの国宝級や重要文化財級の美術品が多数収蔵。菅義偉(すが・よしひで)首相は1月の施政方針演説で、これらの収蔵品について「地方に積極的に貸し出し、文化観光の核とする」と言及していた。指定を通して、観光資源としての価値を明確化する。
5件中4件が絵画で、「日本の花鳥画の到達点」とされる若冲の動植綵絵は30幅構成。鶏や松などを豊かな色彩で写実的に表現した。蒙古襲来絵詞は貴重な軍記絵で、13世紀後半の2度の元寇をほぼ同時代に描き、資料としての価値が高い。教科書にも取り上げられる。
他に指定されるのは2頭の唐獅子が悠然と歩く狩野永徳(かのう・えいとく)の「紙本金地著色唐獅子図(しほんきんじちゃくしょくからじしず)」と、鎌倉時代の絵巻の最高峰「絹本著色春日権現験記絵(けんぽんちゃくしょくかすがごんげんきえ)」。平安時代の能書家、小野道風(おのの・みちかぜ)の書も国宝指定する。
秋ごろまでに指定され、美術工芸品の重要文化財は1万812件(うち国宝902件)となる。文化庁は今後も宮内庁と連携し、同館収蔵の他の作品の指定に向けた作業を進める。