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防衛省は5月9日、交流サイト(SNS)上で拡散された海上自衛隊の護衛艦「いずも」をドローン(無人機)で空撮したとする動画について、実際に撮影された可能性が高いとの分析結果を公表した。当初は偽動画の可能性を示唆していた。同省は接近したドローンによって攻撃された場合、防衛上、重大な支障を生じかねないことから「極めて深刻に受け止めている」とし、警備に万全を期す方針を示した。
動画は約20秒で、海上自衛隊横須賀地区に停泊するいずもに上空から接近し、甲板後方から前方に向かって撮影したとされる様子が映っている。
甲板上に記された艦番号の状況など動画の艦艇と実際のいずもを比較し、周辺環境なども確認した上で実際に撮影された可能性が高いと判断した。ドローンによる危害は確認されていない。
同省によると動画は、3月26日に中国の動画投稿サイトに投稿された。現在は削除されている。その後、同29日にはX(旧ツイッター)にも転載された。動画の撮影者や撮影の目的については言及を避けた。
同地区は、小型無人機等飛行禁止法に基づき、周囲300メートルの上空で管理者の許可なくドローンを飛行させることが禁止されており、海自が常時、厳重に監視している。
いずもは海自最大の護衛艦で、最新鋭ステルス戦闘機F35Bの発着艦を可能とする事実上の空母化を進めている。
木原防衛相「重大な支障生じかねない」
木原稔防衛相は10日の記者会見で、「わが国の防衛に重大な支障を生じさせかねないことから、極めて深刻に受け止めている」と述べ、自衛隊施設の警備に万全を期す考えを示した。
空撮動画がSNS上で拡散された当初の4月2日の会見で偽動画の可能性に言及したことに関しては、ロシアによるウクライナ侵略などで偽情報による世論や意思決定工作に焦点が当たっていることを踏まえ「悪意を持った影響力行使の活動の一環として加工、捏造(ねつぞう)されたものである可能性を含め慎重に分析を行う必要があった」と説明した。