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海に囲まれた日本は、水都とよばれる多くの街がある。水族館の人気も高く、民家の一室から甲子園球場とほぼ同じ広さまで、その数150を超えるという。令和に入り、より楽しく神秘的な空間をめざして、新しい施設も増加の一途だ。魚を見るというより、海の中にいるような演出も増え、子供はもちろんカップルやお年寄りも楽しめる。進化を続ける水族館を訪ねた。
たくさんの〝ないもの〟を誇るのが「四国水族館」(香川県宇多津町)だ。多くの水族館が自慢する珍しい生き物がおらず、見学順路も来館者におまかせ。
魚の生態を紹介する「魚名板」も見当たらない。代わりに置かれるのが職員が一枚一枚イラストやコメントを書き込む「黒板アート解説板」。子供にも分かりやすく人気を集める。
館長の松沢慶将(よしまさ)さん(53)は「珍しい生物を展示するよりも、四国の水景を見てほしい」と話す。
水槽やプールには「景」と名付けたテーマを掲げて個性をアピールする。
「渦潮の景」は、鳴門の渦潮を再現した水槽で、四国4県を代表する魚たちを楽しむことができる。
「夕暮れの景」は瀬戸内海に沈む夕日とイルカの調和が神秘的だ。写真を撮る人、静かに海を見つめる人、豊かな自然に包まれたゆったりした時間が流れていく。
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令和3年10月、神戸にオープンしたのが劇場型アクアリウム「アトア(átoa)」だ。アートと水族館の融合をコンセプトに「精霊の森」や「奇跡の惑星」など、世界観の異なるブースが広がる。
レーザーやスポットライトに照らされ魚たちが舞う。デジタルアートが生み出す世界は、今まで体験したことのない驚きの連続で、水族館のイメージを超えたおもしろさ。
コンセプトは異なるが、「生き物に興味を持ってほしい」という両館の思いは変わらない。進化し続ける全国の水族館。あなたはどこに行かれますか。
文と写真:渡辺大樹(産経新聞写真報道局)