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戦後の急発展、高速鉄道が牽引
1872年、明治時代に鉄道発祥国の英国から日本に輸入された鉄道が、今年で開業150年を迎える。細長い国土での大量旅客・貨物の輸送を可能にし、第二次世界大戦後の日本の復興、経済成長を支えた鉄道の急成長の秘密は、高速鉄道の元祖「新幹線(1964年〜)」の登場にある。
その開発には日本の技術の粋が結集されている。車両に秘められた優れた電気技術ばかりでなく、軌道や車両・運行施設の保守安全点検技術や極めて正確な運行ダイヤを遂行する高度な運行システムがセットになって社会に欠かせないインフラになった。車両やシステムというハードだけでなく、業務にあたる人材にも高度な訓練が施され、それが正確かつ安全なオペレーションが遂行される柱となり、「日本の鉄道は時間に正確で安全」という信頼感を世界に広めることに成功した。
パッケージ型で海外に積極セールス
国内での高速鉄道の需要がほぼ満たされ、人口の減少が予想される2000年以降は、日本の優れた「高速鉄道」「通勤電車」などの交通インフラが、「車両」「軌道」「信号システム」などのパッケージで海外に積極的に輸出される。すでにアジア、欧米、中東、アフリカなど世界15カ国以上に日本の鉄道システムが輸出された。
起伏が激しい日本の地形に合わせて国内の鉄道軌道は世界標準より狭い間隔に技術がアレンジされているが、まさに世界の軌道の幅は国や地域によって様々。それをその国や地域の事情に合わせた仕様に変えて適応させる高い技術が日本のセールスポイントでもあり、海外輸出を牽引してきた。かつて鉄道技術を輸入してきた欧米には高速鉄道や通勤鉄道を、また経済発展が著しいアジアや中東地域にも鉄道のインフラ輸出を拡大してきた。
ところが、そこに転機が訪れた。2010年代半ばに台頭してきた中国の車両メーカーや合併で規模を拡大した欧州・カナダの車両メーカーとの競合である。日本メーカーよりもはるかに大きな規模を武器に低価格で鉄道インフラを世界に売り込むライバルの出現で、日本の海外輸出は厳しい市場競争にさらされるようになった。
先進技術でのさらなる挑戦
日本では、先進技術「超電導リニア」を使った、超高速の「リニア中央新幹線(SCMAGLEV)」の建設計画が進められている。2027年の開設予定で、完成すると、東京(品川)→名古屋間をわずか40分で移動することが可能になる。
また、通勤電車での自動運転の技術開発も進められている。「レベル2」で乗客を乗せての自動運転の実証実験がJR東日本の山手線(東京都)で2022年10月から始まった。2028年までに導入予定のこの技術の動向にも世界の注目が集まる。
筆者:海藤秀満