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製法にこだわった高級日本酒の輸出が好調だ。新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、和食レストラン向けの落ち込みなどで、昨年の日本酒の輸出量は2年連続で減少した。一方、輸出金額は11年連続で過去最高を更新。原料のコメを半分以上磨き、雑味を少なくした大吟醸酒などがアジアの富裕層の「家飲み」需要を捉えた。品質管理の難しい日本酒の輸出を可能にした技術革新も後押しし、緊急事態宣言の再発令で苦しむ国内に反して海外市場は過熱している。
財務省の貿易統計によると、令和2年の日本酒の輸出量は前年比12.7%減と落ち込んだが、輸出金額は3.1%増に伸び、海外の愛飲者が量よりも質を求める傾向が強まった。
特に大幅な輸出金額の伸びを見せたのが香港と中国だ。昨年まで長年1位を維持していた米国が25.0%減(金額50.7億円)へ落ち込んだのに対し、香港は56.7%増(61.7億円)、中国は15.8%増(57.9億円)とそれぞれ急増し、米国を抜いて1位、2位に躍り出た。
日本酒造組合中央会の宇都宮仁理事は「米国の日本酒需要は和食レストランが中心で、外出が制限されたコロナの影響を強く受けた」と指摘。対して香港や中国は「家で飲む機会が多く、コロナ禍で旅行などを楽しめなかった分、品質の高い酒の需要が急拡大した」と分析する。加えて、欧米に比べコロナの収束に早くめどがついたことも追い風になったとみている。
さらに奏功したのは輸送技術の進展だ。輸出される日本酒は長期間の船輸送が多く、劣化を防ぐ火入れ(加熱処理)したものが主流だ。そのため、火入れせず新鮮な味わいが特徴の「生酒」など品質管理の難しい酒の輸出は困難だった。だが、近年は瞬間冷却技術などを活用することで、その課題を解決。より付加価値の高い日本酒の輸出を可能にした。
政府は昨年策定した農林水産物・食品の輸出拡大に向けた実行戦略で日本酒を重点品目に設定しており、通販や試飲会の拡大など輸出戦略を積極化している。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)などの経済連携協定の発効で日本酒の輸出関税が多くの国で撤廃されたことで、今後さらに輸出拡大に拍車がかかると期待されている。