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Visitors captivated by a super-telephoto lens (February 22, 2024, at Pacifico Yokohama) (©JAPAN Forward by Hidemitsu Kaito)

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カメラと写真・映像関連機器・用品の国内最大級の展示会「CP+(シーピープラス)2024」が開催された。最新の写真・映像機器の動向を探ろうと、4日間で約5万人が会場を訪れた。

 

 

トイカメラから高級機までが勢揃い

 

「CP+」は展示会施設パシフィコ横浜で2月22日から25日まで、リアルの会場とオンラインのハイブリッド方式で開催された。4日間の会場来場者は約5万人だった。カメラメーカーや写真用品メーカーなど88社・団体が出展し、コロナ禍前の水準に戻った。

 

デジタルカメラ関係が中心だが、フィルムカメラに関する用品やサービスも出展された。手の中に収まる超小型のカメラから、動画対応の高級機まで、国内外の様々なメーカーが集った。

 

キヤノンのMR(複合現実)体験コーナー=2月22日、パシフィコ横浜(海藤秀満撮影)
ペットに取り付けられるアクションカメラ=2月22日、パシフィコ横浜(海藤秀満撮影)
富士フイルムの手のひらサイズカメラ=2月22日、パシフィコ横浜(海藤秀満撮影)

 

高級機はミラーレスが牽引

 

業界団体のカメラ映像機器工業会(CIPA)によると、2023年のレンズ交換式とレンズ一体型を合わせたデジタルカメラの合計出荷数は772万台で、前年比-3.6%だった。そのうち、「レンズ交換式」の8割を占めるのは「ミラーレス」カメラで、前年比+18.6%で業界をけん引している。「ミラーレス」とは、一眼レフカメラの光学式ファインダーの代わりに電子ビューファインダーや液晶ディスプレイを通じて撮像を確認する形式のカメラ。軽量・小型化が図られ、電子式シャッターの搭載で撮影時のシャッター音が大幅に抑えられる特徴がある。さらにAI(人工知能)技術の応用で、人物や乗り物など対象別のオートフォーカス機能も格段に向上している。

 

また、最近は動画の撮影機能も搭載されているので、アマチュアからプロフェッショナルまで動画撮影を楽しんだり、編集した作品を公開する用途も広がっている。

 

静止画も動画も撮影できるカメラが主流だ(ニコンブース)=2月22日、パシフィコ横浜(海藤秀満撮影)

 

2000年頃からデジタルカメラの出荷数が急増し、フィルムカメラから代替わりしていく。2010年にはデジタルカメラの普及でカメラの総出荷数は1億2146万台を記録(CIPA)するが、スマートフォンの普及と搭載カメラ機能の向上に伴い、ここから減少に転じる。カメラメーカーはスマートフォンとは違う差別化された機能を求められるようになる。

 

来場者で賑わう会場=2月22日、パシフィコ横浜(海藤秀満撮影)

 

世界で存在感示す日本メーカー

 

精密機器、カメラ産業は日本メーカーが世界シェアを席巻している。上位6社(キヤノン、ソニー、ニコン、富士フイルム、パナソニック、OMデジタルソリューションズ)の総出荷数の世界シェアは9割を超える(推定)とされる。

 

パナソニックのブース=2月22日、パシフィコ横浜(海藤秀満撮影)

 

特にニコンとキヤノンは報道・スポーツの分野で最上位機種カメラとレンズで競合してきたが、ここにソニーが「ミラーレス」で約10年前から参入し、3社が混戦している。これまで、オリンピックの年にはニコンとキヤノンが競ってスポーツ撮影用のカメラや望遠レンズの最上位の新製品を「CP+」に合わせて発表しファンの注目を集めたが、今年は両社とも目立った新製品の発表がなかった。その背景には、2020年の開催予定が新型コロナウイルス感染の影響で1年ずれた、2021年の東京オリンピック後にソニーに対抗する「ミラーレス」カメラを両社がリリースしてからまだ3年も経たないことがある。「ミラーレス」で先行するソニーを追って、キヤノンとニコンは戦略転換を迫られ、切磋琢磨している。

 

日本のデジタルカメラは宇宙でも活躍している。キヤノンは衛星にカメラ技術を投入し、ソニーも同様だ。ニコンは2024年1月に国際宇宙ステーション(ISS)に十数台の「ミラーレス」カメラ「Z9」を送った。すでにISSで使われている一眼レフカメラと置き換えるためで、ニコンは半世紀以上に渡り、米航空宇宙局(NASA)との協業で宇宙計画の舞台で撮影に協力している実績がある。

 

ソニーは人工衛星にカメラ技術を提供している=2月22日、パシフィコ横浜(海藤秀満撮影)

 

中国メーカーも急増

 

交換レンズや照明器具などで中国メーカーの出展も目立った。動画対応レンズや特殊な撮影に適した撮影装置で差別化された製品に注目が集まった。

 

中国のレンズメーカー、Venus Opticsの交換レンズ=2月22日、パシフィコ横浜(海藤秀満撮影)
中国Kandao Technologyのシネマ3D VRパノラマカメラ=2月22日、パシフィコ横浜(海藤秀満撮影)

 

20世紀にはドイツやスウェーデン、米国のカメラメーカーが主流だった時代もあったが、業界は様変わりした。デジタルの時代になり、日本のカメラメーカーも再編・構造改革を迫られた。ソニーはデジタルカメラに不可欠な画像センサーの主力メーカーになり、他社にセンサーを供給している。キヤノンは医療機器分野でもカメラ技術を応用している。ニコンも産業用光学技術で幅広く貢献している。光学・映像撮影分野では、日本の精密技術の粋が結集されている点に注目したい。

 

筆者:海藤秀満(JAPAN Forwardマネージャー)

 

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