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岸田文雄首相は7月29日、官邸で産経新聞の単独インタビューに応じた。やり取りは次の通り。
中国にも核軍縮関与を
-日本の首相として初めて核拡散防止条約(NPT)再検討会議への出席を決意した理由は
「2015年に外相としてNPT再検討会議に出席したが、当時は会議として一致した成果を出すことができず、残念な思いをした。その後、ロシアによるウクライナ侵略も起き、核軍縮・不拡散をめぐる環境はより厳しくなっている。これが現実であり、私自身が強い危機感を持っている」
「しかし、こうしたときだからこそ、核軍縮・不拡散の礎であるNPTの重要性はますます高まっており、NPTの強化が重要だ。唯一の戦争被爆国である日本がしっかりと発信し、『核兵器のない世界』に向けた機運を盛り上げる、1つのきっかけとしたい」
-中国に対してはどのように核軍縮を呼びかけていくのか
「中国の軍事的な動向が地域や国際社会の安全保障上の懸念となっているのは事実だ。中国に対しても日本が主張すべきことは主張し、核軍縮の分野でもしっかりと責任を果たしてもらわなければならない。核保有国を変えなければ現実は変わらない。同盟国である米国はもちろんだが、中国にも核軍縮に関与してもらうよう、日本として努力を続けなければならない」
有事の体制という緊張感
-安倍晋三元首相の国葬(国葬儀)を決断した理由は
「安倍氏に対する個人的な思いはあるが、あくまでも判断の念頭にあるのは、安倍氏が憲政史上最長の8年8カ月にわたって政権を担ったことに加え、何よりも国内外から多くの弔意が寄せられているからだ。26日にオーストラリアのモリソン前首相と朝食をともにしたが、議会で弔意決議を行うということを話していた。もちろん、法的根拠は確認したうえで政府として国葬を判断した。経緯や理由についてはこれからも国民に丁寧な説明をしていきたい」
-内閣改造・党役員人事はいつごろを想定しているのか
「(8月3日召集予定の)臨時国会の日程も今やりとりが続いている段階だ。それから先の日程はまだ何も決まっていない。中身はなおさらだ。ただ、今は歴史を画する、何十年に一度と言われる大きな課題が山積しており、こういったときの内閣や党役員の体制は有事の体制という緊張感で臨まなければならない。党の結束が大事だということは間違いがなく、そういった観点から具体的な人事を考えなければならない」
-菅義偉前首相ら「非主流派」への処遇は
「閣僚や役員のポストの数は決まっているが、誰に頑張ってもらうことが全体の結束の雰囲気につながるかは考えたい。具体的に誰を入れる、入れないというのは今の段階では固まってはいない」
行動制限は想定せず
-新型コロナウイルスの「第7波」の感染拡大が続いている。行動制限をやらずに乗り切る考えに変わりはないか
「新型コロナとの戦いは、これまで6回の波を乗り越え、今日に至っている。わが国全体としてさまざまな対応力が強化されてきた。この対応力を最大限稼働させ、感染対策に万全を期しながら経済社会活動を取り戻していくというのが基本的な考え方だ。オミクロン株の感染場所は飲食店よりも学校や家庭などが多い状況のため、従来型の飲食店を中心とした行動制限は今のところ考えてはいない」
筆者:田村龍彦、永原慎吾(産経新聞)