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自衛隊がドローン(無人機)による攻撃に脆弱(ぜいじゃく)である深刻な問題が露呈した。
海上自衛隊横須賀基地に停泊中のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」を、ドローンが違法飛行して撮影した動画が、中国の動画投稿サイトやX(旧ツイッター)で拡散した。
撮影したドローンは海自基地に侵入し、「いずも」の甲板上空を飛んだが、自衛隊も警察も探知できなかった。
「いずも」はF35B戦闘機を搭載する軽空母へ改修中の海自主力艦だ。爆弾を積んだドローンで奇襲攻撃すれば「いずも」の出港や作戦行動を比較的長期間、阻める。日本の防衛体制に大きな穴が開いてしまう。
木原稔防衛相は「(事態を)極めて深刻に受け止めている」と述べ、警備に万全を期すと表明した。失態を猛省し、対策を講じてもらいたい。
小型無人機等飛行禁止法(ドローン規制法)により、海自横須賀基地と周囲300メートルの上空は許可なくドローンを飛行させることが禁じられている。
ドローンで空撮したのは中国人とみられる。いたずら目的だったと釈明しているが、日本の安全保障を損なう違法行為であり許されない。警務隊や警察当局は摘発すべきだ。
「いずも」動画が投稿されたXには米軍横須賀基地での米原子力空母「ロナルド・レーガン」の空撮動画も投稿された。米軍基地も規制の対象だ。
日本が実効性ある対策を迅速に講じられるかが問われている。探知できなかったのは問題だし、探知できてもドローンを排除、無力化する態勢は不十分だ。電波妨害をするというが、ドローンを遠隔操作する電波は民生用の周波数帯だ。自衛隊や警察が十分に活用できる態勢になっているのか疑問だ。
迎撃用レーザーの導入も急ぐべきだが、これを含め、自衛隊のドローンへの武器使用は防衛出動前は容易ではない。基地周囲の警備は警察が主として担うが、現状の都道府県警察に自衛隊、米軍施設を365日24時間ドローンなどから守る能力と意志があるとは思われない。
警備強化が掛け声倒れになれば侵略を企(たくら)む国が喜ぶ。防衛省、警察庁、電波を所管する総務省、国家安全保障局は対ドローンの検討会合を直ちに開き、抜本対策を講じるべきだ。
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2024年5月23日付産経新聞【主張】を転載しています