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韓国が不法占拠する竹島(島根県隠岐の島町)周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内で韓国の調査船が実施した海洋調査をめぐり、松野博一官房長官は30日の記者会見で「到底受け入れられない」と非難した。だが、第8管区海上保安本部は同日も竹島北方の日本のEEZ内で韓国の調査船が再びワイヤのようなものを海中に投入している様子を確認した。韓国の新政権誕生を機に芽生えた関係改善への期待に冷や水を浴びせられた格好だ。
6月3日に日米韓局長級協議が韓国・ソウルで開かれる予定で、日本政府はこの場で調査船問題を取り上げることを検討している。
ワイヤのようなものを海中に投入する韓国の海洋調査船=30日午前10時50分ごろ、島根県・竹島北方(第8管区海上保安本部提供)
外務省によれば、竹島北方の日本のEEZで29日、韓国の国立海洋調査院に所属する調査船がワイヤのようなものを海中に投入していることを確認した。今月9日から12日にかけて韓国国営企業に関係する調査船が竹島周辺を航行した時期は韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の就任式と重なり、林芳正外相が訪韓中だった。海上保安庁幹部は「日韓関係改善とは矛盾した行動だ」と語る。
日韓関係はいわゆる徴用工問題や元慰安婦問題、レーダー照射問題などを受けて、文在寅(ムン・ジェイン)政権下で「戦後最悪」とも言われてきた。だが、今月の日本重視の姿勢を打ち出した尹政権の誕生を機に「関係改善は待ったなし」(岸田文雄首相)との機運が高まっていた。
政府関係者は、相次ぐ調査活動について「『この案件はまずい』という感性がなかったのか」と韓国側の対応に不信感を募らせる。外務省幹部は「政権が代わったからといって領土問題が解決するという幻想は抱かない方がいい」と冷静に語った。
松野氏は30日の記者会見で「竹島は歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに日本固有の領土だ」と強調。「引き続き韓国側に適切な対応を強く求めていく」と述べた。
ただ、この海域については韓国側も自国のEEZ内だと主張しており、日本側の抗議や要請を受け入れるかは不透明だ。
一方で、政府は核・ミサイル開発を進める北朝鮮に対応するため、日韓関係を正常化させたい思惑もある。韓国側の出方を慎重に見極めた上で、懸案解決に取り組む考えだ。
■自民部会「韓国に対抗措置を」
自民党は31日、外交部会と領土に関する特別委員会の合同会合を党本部で開き、竹島(島根県隠岐の島町)周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内で海洋調査を続ける韓国への対応について議論した。出席議員からは、日本も竹島周辺に海洋調査船を航行させるなど、新たな対抗措置を求める意見が相次いだ。
佐藤正久外交部会長は会合で、「尹錫悦(ユン・ソンニョル)新政権が本当に日本との関係改善を早期に求めるなら、このタイミングで海洋調査などやるはずがない」と述べ、日本政府の中止要求に応じない韓国の対応を批判。日本政府に対しては「主権を守るための外交が機能していないと言わざるを得ない」と指摘し、対抗措置の必要性を訴えた。
秋葉賢也委員長は記者団に対して、「日本側も竹島のEEZで海洋調査をすることも含めステージの違う対応が必要だ」と強調した。会合では、日本が実行可能な対抗措置について次回会合までに検討するよう政府側に指示した。