6月16日、ウクライナの首都キーウで記者会見する(右から)マクロン仏大統領、
ウクライナのゼレンスキー大統領、ドラギ伊首相ら(ロイター)
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ロシアによる侵略戦争と戦争犯罪を止めるため、先進7カ国(G7)や欧州連合(EU)などの国々は結束してウクライナを支援していかなければならない。
G7メンバーの独仏伊と、ウクライナの隣国ルーマニアの4首脳が、ウクライナの首都キーウを訪ね、ゼレンスキー大統領と会談した。
4カ国はEU加盟国でもある。4人の首脳は会談で、ウクライナをEU加盟候補国にすることを支持し、ウクライナ支援の継続を伝えた。これを受け、EUの執行機関、欧州委員会はウクライナを加盟候補国とするよう加盟国に勧告した。23、24日のEU首脳会議の議題となる。
マクロン仏大統領は、ゼレンスキー氏との会談後の共同記者会見で、対露戦をめぐり「ウクライナに決して譲歩を求めない」と述べた。訪問後には「ウクライナは欧州の一員で(ウクライナの)勝利までEUは味方だ」と語った。
ショルツ独首相は共同記者会見で、さらなる武器供与を念頭に「今後も必要な限り支援を継続する」と述べた。
ロシアの侵略を阻む上で妥当な表明だが、最近の独仏伊3カ国には「力による現状変更」を追認しかねない危うさもあった。
マクロン氏は、「外交的解決のため、ロシアに屈辱を与えてはならない」と語ってきた。ショルツ氏はウクライナへの武器供与の拡大に慎重で、ロシアのプーチン大統領に現状での停戦を呼びかけた。イタリアのドラギ首相はウクライナを中立化する調停案を国連に提出した。
日本の約1・6倍の広さがあるウクライナは、国土の2割を占領された。「ロシア軍の完全撤退」を停戦の前提条件とし、国土と国民を取り戻すため、苦しい戦いを続けている。
ウクライナ政府は、ロシアに侵略の果実を与えかねない独仏伊首脳の甘い言動に反発した。このため、独仏伊の首脳はキーウを訪ねて、支援の姿勢を改めて示す必要に迫られたともいえる。
ロシア軍の侵攻から100日以上が経った。「支援疲れ」からG7やEUで不協和音が生じれば、プーチン氏を勢いづけることにもなりかねない。今月末にはG7首脳会議がある。引き続きウクライナを支えていけるよう、日本は働きかけを強めるべきだ。
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2022年6月20日付産経新聞【主張】を転載しています