home invasion

Philippine President Ferdinand Marcos Jr (© Aaron Favila/Pool via REUTERS)

施政方針演説を行うフィリピンのマルコス大統領
=7月25日(ロイター)

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南シナ海の大半に主権が及ぶとする中国の主張を否定した仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の裁定から6年が過ぎた。いまだに中国は「紙くずだ」と裁定を無視し、現状変更の既成事実化を進めている。国際社会は改めて中国を厳しく非難しなければならない。

 

中国の脅威を前に提訴に踏み切ったのはフィリピンである。同国のマナロ外相は裁定から丸6年たった7月12日に声明を発表、「議論の余地のない最終的なものだ」と裁定の意義を指摘し、中国を念頭に「法律や歴史から消去しようとする試みを断固拒否する」と強調した。フィリピンでは6月末にマルコス政権が発足したばかりで、マナロ氏の声明は、新政権が裁定を重視し中国に履行を求める方針を明らかにしたものだ。

 

二国間会談に先立ち、中国の王毅外相(右)と会話するフィリピンのマナロ外相=7月6日、マニラ(AP)

 

前政権のドゥテルテ時代とは異なる。裁定直前2016年6月に大統領に就任したドゥテルテ氏は中国からの経済支援を期待し、裁定を「ただの紙切れに過ぎない」と中国と足並みをそろえた。曲折はあったものの、中国に配慮する姿勢が目立った政権だった。

 

南シナ海裁定6年にあたり、中国を非難するフィリピンの活動家=7月12日、フィリピン・マカティ市(ロイター)

 

その間に何が起きたか。中国は南シナ海の人工島の軍事拠点化を進行させた。昨年3月には中比両国が領有権を主張するスプラトリー(中国名・南沙)諸島の周辺海域で中国船220隻以上が、今年4月にも100隻以上が確認され緊迫した事態となった。現状変更の既成事実化である。

 

米海軍は7月13、16の両日、南シナ海で駆逐艦が「航行の自由作戦」を実施したと発表、中国を牽(けん)制(せい)した。マルコス新大統領への米国の期待は大きい。バイデン米大統領は訪米を要請している。

 

一方の中国も7月、王毅国務委員兼外相がマルコス氏と会談、訪中を打診した可能性がある。米中両国が、綱引きを繰り広げている格好だ。

 

中国の王毅外相(左)と会談するフィリピンのマルコス大統領=7月6日、マニラ

 

マルコス氏は就任前、米中の間で「非常に繊細な道」を歩まなければならないだろうと吐露している。足元は定まっていない。

 

林芳正外相は裁定から6年を迎えた7月12日、マナロ氏と電話会談し、フィリピンの沿岸警備隊の装備を支援する方針を伝えた。日本政府は米国と連携しながら、マルコス政権を支えていくべきだ。

 

凶弾に倒れた安倍晋三元首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」の実現に、フィリピンの協力は絶対に欠かせない。

 

 

2022年7月19日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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