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中国人民解放軍がペロシ米下院議長の台湾訪問直後から、台湾周辺で大規模な軍事演習を開始し、緊張が一挙に高まっている。
台湾当局によると、中国軍は4日、11発の弾道ミサイルを発射したという。日本政府は5発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾したと推定している。
日本近海に何度もミサイルを発射した北朝鮮でさえ、1日にこれだけの弾道ミサイルを日本のEEZに撃ち込んだことはない異常な振る舞いだ。
今回の事態は、台湾有事の際に日本が軍事的に巻き込まれる可能性が極めて高いことを示している。日本への攻撃を想定したミサイル発射だったともいえ、座視することは許されない。
岸田文雄首相は5日、ペロシ氏との会談で中国に強い非難と抗議をしたことを説明し、台湾海峡の平和と安定のため、日米が緊密に連携することを確認した。
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は前日、ソウルを訪問したペロシ氏と対面での会談をせず、電話会談で済ませた。もし、中国への配慮があるのなら、それは誤ったシグナルを送ることになる。力による現状変更を試みる中国の態度にこそ、非があることを忘れてはならない。
中国軍による「重要軍事演習」は7日まで続く。台湾を取り囲む6つの空・海域で行う大規模な実弾訓練を中国メディアは「台湾封鎖」と報じている。
しかも一部は台湾に近接する海域で、偶発的衝突を招きかねない極めて危険な演習だ。台湾有事は日本有事であり、東アジアは一気に戦争の危機にさらされる。
日本政府によると、少なくともミサイル4発が台湾本島上空を越えている。国連安保理常任理事国の暴挙を許してはならない。習近平政権は頭を冷やすべきだ。今回のペロシ氏の台湾訪問は完全に合法的なものである。バイデン米政権は「一つの中国」政策を維持すると表明している。台湾独立を支持しているわけではない。
習国家主席は7月28日、バイデン大統領と電話で会談し、台湾問題で「火遊びをすれば必ず焼け死ぬ」と恫喝(どうかつ)した。中国共産党大会を秋に控え、米国に弱腰を見せられないのだろう。
だが、火遊びをやめなければならないのは中国の方である。即刻、軍事演習を中止すべきだ。
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2022年8月6日付産経新聞【主張】を転載しています