北海道電力の泊原子力発電所
2022年5月、運転停止から10年が経過した
=2012年11月(大竹直樹撮影)
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原発・エネルギー政策の大きな転換だ。政府は電力の安定供給のため、今後も原発活用を着実に進めてもらいたい。
岸田文雄首相は8月24日に開いた政府の「グリーントランスフォーメーション(GX)実行会議」で、次世代原発の開発・建設を検討するように指示した。
政府はこれまで、原発の新増設や建て替え(リプレース)をめぐっては想定していないとの立場を重ねて示してきた。次世代の原発の建設は、こうした方針を大きく見直すものである。首相の判断を歓迎する。
また、深刻な電力不足に対応し、首相は来年以降に新たに7基の既存原発の再稼働を目指す考えも表明した。こうした原発の早期再稼働は、東日本の電力供給に不可欠だ。原子力規制委員会の安全審査に合格しながら、地元の同意が得られていない原発について、政府が前面に立って再稼働への理解を求めることが必要だ。
GX会議では、2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現に向け、脱炭素化の主要課題などを洗い出した。その中で30年以降の中期的な検討項目として次世代原発の開発や建設を位置づけ、首相が具体化を指示した。
経済産業省の審議会でも、高い安全性などを持つ次世代原発の開発工程表をまとめたばかりだ。政府が昨年、閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」には原発の新増設は盛り込んでいない。これを明確に転換することで、確実な実用化を図ってもらいたい。
来年以降には7原発の追加再稼働も目指す。この中には、地元が再稼働に同意していない東京電力の柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)や日本原子力発電の東海第二原発(茨城県)も含まれる。
これまで国内では、規制委の安全審査に合格して10基の原発が再稼働を果たしている。ただ、これらはすべて西日本に位置し、原発が稼働していない東日本では電力不足が深刻化している。政府が早期の追加再稼働を主導し、電力の安定供給に努めてほしい。
原発運転の延長検討も盛り込んだ。現行は40年運転を原則とし、20年の運転延長を認めるとしているが、60年超への再延長を検討する。すでに米国では80年運転も認められている。安全性を確保しながら柔軟な対応が問われる。
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2022年8月25日付産経新聞【主張】を転載しています