20220323 JSDF Japanese Self Defence Forces

Members of the Ground Self-Defense Forces during a remote island defense drill at the Higashi-Fuji Maneuver Area in Shizuoka Prefecture on March 23, 2022. (© Sankei)

離島防衛の訓練を行う陸上自衛隊員
=3月23日、静岡県の東富士演習場

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防衛省が令和5年度予算の概算要求で、5兆5947億円を計上し、さらに多数の事業を金額を記さない「事項要求」として盛り込んだ。

 

岸田文雄政権は6月の「骨太の方針」で北大西洋条約機構(NATO)加盟国が国防費の国内総生産(GDP)比2%以上の達成を急いでいると指摘し、「国家安全保障の最終的な担保となる防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と記した。

 

国際常識ともいえるGDP比2%には単年度で約11兆円必要だ。5兆5947億円では到底届かず、韓国の来年度国防予算案(約5兆8600億円)よりも少ない。政府案では、抑止力構築へ思い切った増額を求めたい。

 

ロンドンで講演する岸田首相=5月5日(代表撮影)

 

12月の国家安全保障戦略など戦略3文書の改定時には、今後5年間の防衛費の総額も決まる。防衛省は周辺国の軍事力を分析して防衛力を検討した。事項要求を大幅に認め、抜本強化の初年度にふさわしい規模にしてもらいたい。財源を議論すべきはもちろんだ。

 

概算要求で、侵略軍を遠方からたたく「スタンド・オフ・ミサイル」配備を重視したのは画期的だ。対地攻撃にも使える陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾を改良する。射程を現行の百数十キロから千キロ以上に延伸し、予定を3年間前倒しして、8年度中の部隊配備を目指す。

 

南北に長い日本列島の守りに役立つ一方で、中国大陸沿岸部や北朝鮮も射程に収まる。「反撃能力」保有を決めれば中国や北朝鮮による侵略の抑止効果がある。日米のミサイル防衛網を出し抜こうと中朝やロシアはミサイルの変則軌道化や極超音速化を進めている。今や、国民を守るには反撃能力という抑止力が求められる。

 

PAC3の前で航空自衛隊員(右端)から説明を受ける空自基地祭の来場者ら=6月11日、奈良市の航空自衛隊奈良基地

 

概算要求で弾薬・燃料の確保や装備の部品不足解消、司令部地下化など施設の抗堪(こうたん)性強化を「防衛力の抜本的強化」の柱にしたのも正しい。予算不足で後回しにされてきた分野だが、現有部隊の十全な能力発揮に不可欠である。

 

政府内調整によって、防衛省が希望する本当の防衛力の姿、予算額を示すことが認められず、「事項要求」が多用された点は残念だった。反撃能力保有の方針表明が遅れ、思い切った防衛費増額の決意があいまいな首相に責任の一端がある。早期にあるべき防衛力、防衛費の全容を示し、その必要性を全力で国民に説くべきだ。

 

 

2022年9月3日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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