20220907 Senkaku Irabu Island Okinawa

A small steel high-speed patrol boat equipped with shock absorbers on both sides in case of a collision with a foreign fishing vessel. At Nagayama Port, Irabu Island, Miyakojima City, Okinawa Prefecture, on September 7, 2022 (© Sankei by Naoki Otake)

外国漁船との衝突に備え両舷に緩衝材を装備した鋼鉄製の小型高速巡視船
=9月7日、沖縄県宮古島市の伊良部島長山港(大竹直樹撮影)

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政府が尖閣諸島(沖縄県石垣市)の魚釣島など3島を地権者から買い上げ、「国有化」してから10年が経過した。

 

当時の野田佳彦政権は目的を「尖閣の平穏かつ安定的な維持・管理」としたが、緊迫の度合いは増している。これはひとえに中国側の行動に問題がある。

 

竹島、尖閣諸島などに関する領土問題について記者会見する野田佳彦首相(当時)=2012年8月24日午後、首相官邸(酒巻俊介撮影)

 

尖閣周辺では、領有権を主張する中国の海警局船の領海侵入や接続水域での徘徊(はいかい)が常態化した。平成28年8月には海警局船13隻と300隻の中国漁船が押し寄せた。中国海軍の軍艦や潜水艦が、接続水域航行の挑発を重ねてきた。

 

尖閣は日本固有の領土である。これを奪おうとする中国が海警局船や軍艦を航行させることは容認できない。

 

中国が日本領だと認めてきた証拠は多い。昭和28年1月8日付の中国共産党機関紙「人民日報」は、琉球諸島を構成する島々として「尖閣諸島」を挙げていた。中国が国際的に領有権を唱え始めたのは昭和46年12月である。国連機関が周辺に海底油田がある可能性を指摘してからだ。尖閣が日本の島であるのは疑う余地がない。

 

尖閣諸島周辺の接続水域を航行する中国の公船や漁船に対応する海上保安庁の巡視船(左端)=2016年8月(海上保安庁提供)

 

沖縄に近い台湾をめぐる情勢は緊張の度合いを高めつつある。それを受けて、尖閣問題には、日本人が従来あまり考慮していなかった要素が浮上してきた。中国が尖閣を台湾の付属島嶼(とうしょ)とみなしている点だ。中国が目指す「台湾統一」は尖閣領有を伴わなければ完成しない理屈になる。

 

尖閣の守りを日本単独の問題とみなすだけでは足りなくなった。台湾有事と連動する有事としても備えなければならない。安倍晋三元首相が「台湾有事は日本有事」と述べたのは的を射ている。

 

尖閣を含む南西諸島の平和を守るには、抑止力の充実が重要だ。外交努力はもちろんだが、「力の信奉者」中国の暴発を防ぐには、確固たる抑止力が欠かせない。

 

海上保安庁の増強に加え、南西諸島への自衛隊の配備や弾薬、長射程ミサイルの用意を急いでもらいたい。米軍との連携強化や台湾軍との意思疎通も重要である。

 

中国は「尖閣国有化」を口実に海警局などによる侵入を激化させてきた。国有化に続けて日本政府が取るべきだったのは、公務員や自衛隊の尖閣常駐の決断である。日本固有の領土なのだから臆することはなかった。有人島として守り抜くことが適切である。

 

 

2022年9月14日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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