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宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月12日、小型ロケット「イプシロン」6号機の打ち上げに失敗した。
政府が目指す衛星打ち上げビジネスでの国際市場への参入、宇宙産業の育成・振興にとって、大きな痛手である。徹底的な原因究明により、日本の宇宙技術の信頼を早期に回復する必要がある。
宇宙開発をはじめ、科学技術の推進力は「挑戦」と「失敗」である。今回の失敗を新たな挑戦の糧としなければならない。
イプシロン6号機は、打ち上げから約6分後に姿勢制御系の異常で「予定の軌道に投入できない」と判断され、地上から指令破壊の信号を発信した。第2段エンジンの燃焼を終了し、第3段分離の直前だった。JAXAによると、異常があった姿勢制御系は、成功を続けてきた5号機までと技術的な変更はない部分だという。
イプシロンは民間のIHIエアロスペースへの移管が予定されている。技術面での検証だけでなく、成功が続いていたことで見落とした問題点がなかったかなど、失敗につながった可能性を多角的に洗い出し、民間に引き継ぐことがJAXAの使命である。
日本のロケット開発は移行期にある。小型のイプシロンは6号機が最終機であり、次の大型基幹ロケット「H3」との技術共有で低コスト化を図る「イプシロンS」の初打ち上げが来年度に計画されている。
イプシロンは今回の失敗がなかったとしても、多くの課題を抱えている。衛星打ち上げ市場への参入を見据え低コスト、効率化を追求し、人工知能による機体点検やパソコンによる「モバイル管制」を実現したにもかかわらず、平成25年の初号機(試験機)の打ち上げから10年間で、打ち上げ実績は6機(今回の失敗を含む)にとどまった。商業衛星を搭載したのも6号機が初めてだった。
「ロケット打ち上げに革命を起こす」という開発陣の意気込みと自負は、空回りしたままだと言わざるをえない。
低コスト化や技術革新だけでは宇宙ビジネスで先行する欧米に追いつけない。民間企業や海外での需要の開拓と取り込みが、日本の宇宙産業を軌道に乗せるためには不可欠である。今回の失敗を、官民の両輪で宇宙産業を育み、伸ばす「起点」としたい。
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2022年10月13日付産経新聞【主張】を転載しています