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日豪両国の首脳が会談し、新たな安全保障共同宣言に署名した。
宣言は「日豪の主権および地域の安保上の利益に影響を及ぼしうる緊急事態に関し、相互に協議し対応措置を検討する」と明記した。
インド太平洋地域で影響力を強める中国を念頭に置いたものである。
日豪関係を安保面で一歩前に進めたことを評価し、歓迎したい。これは、安倍晋三元首相による地球儀を俯(ふ)瞰(かん)する外交を継承するものである。岸田文雄首相は、安倍政権では長く外相も務めた。
中国は習近平政権が3期目に入り、独裁色を強めた。台湾有事の危険性も高まっている。日豪両国の軍事面を含む幅広い分野における関係強化は地域の平和と安定に貢献する。
岸田首相は豪首相との共同記者発表で「新たな宣言は安保や防衛協力の今後10年の方向性を示す羅針盤だ」と述べた。宣言は「自由で開かれたインド太平洋」の柱である日豪の極めて重要な「特別な戦略的パートナーシップ」であることも再確認した。
共同声明は、台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認し、中国を念頭に東・南シナ海の情勢への懸念も共有し、威圧的な行動や一方的な現状変更に反対した。
宣言や声明で確認した防衛や外交における連携の強化を具体的にどう深化させていくかが、今後の大きな課題である。
近年では、自衛隊と豪州軍が陸海空での共同訓練を重ねている。こうした実績を重ねることが、地域で威圧的な行動を強める中国を牽(けん)制(せい)することにつながる。
2020年には、新型コロナウイルスの発生源をめぐって豪州が独立した調査を求めたのに対し、中国が豪州産ワインに高関税を課すなどの露骨な対抗措置を取った。こうした中国の不当な外交姿勢には、日豪が足並みをそろえて対処すべきである。
経済安全保障の観点から、資源・エネルギー分野での協力も重要だ。レアアース(希土類)を含む重要鉱物のサプライチェーン(供給網)の構築でも合意した。首脳会談が鉄鉱石の主産地で、潜水艦基地のあるパースで行われたことは、経済安保と軍事両面での連携を十分に印象付けた。
日本は今後、米豪印との協力枠組み「クアッド」での関係強化も主導してほしい。
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2022年10月25日付産経新聞【主張】を転載しています