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ウクライナ問題 日本は存在感を
ヒラリー・クリントン元米国務長官(74)は21日までに、都内でフジテレビと産経新聞のインタビューに応じた。ロシアによるウクライナ侵略をめぐり、先進7カ国(G7)の来年の議長国日本に事態打開に向けた指導力を発揮するよう期待するとともに、中国が台湾侵攻に踏み切った場合、代償を伴うと警告した。クリントン氏は高松宮殿下記念世界文化賞の国際顧問として来日していた。
クリントン氏はウクライナ侵略に関し、「21世紀の今日、隣国に侵略できるとなれば、ほかの攻撃的な国々への危険なシグナルとなる」と強調。日本が来年1月から、G7議長を務めることにも言及し、事態打開に向け存在感を発揮すべきだとの認識を示した。
プーチン露政権が核兵器を使用するとの懸念が強まるが、「(使用は)差し迫ったものでなく、脅し」との見方を披露。一方、実際に使用された場合、「ロシアには破滅的な事態がもたらされる」と牽制(けんせい)した。
中国の習近平国家主席は開催中の共産党大会で台湾情勢に関し、「武力行使の放棄を約束しない」と言明した。これに対し、台湾近海が日本にとってもエネルギーや物資輸送の重要航路であると指摘し、「海上輸送妨害や台湾への侵攻、民主主義の破壊は(相応の)結果が伴う」と述べた。
中露2国が極東地域で軍事演習を実施し、北朝鮮が弾道ミサイルを発射するなど、日本への脅威が高まる中、「日米は軍事演習などを通じ、結束しているとのメッセージを(明確に)送るべきだ」とも語った。
米国で来月行われる米中間選挙で、クリントン氏の民主党は厳しい戦いを余儀なくされている。政権与党が厳しい審判を受ける「歴史上の先例」が米国にはあるとした上で、多くの共和党候補が掲げる提案は人々が直面する現実から乖離(かいり)していると批判した。
2024年の大統領選で、自身が出馬することは否定。共和党のトランプ前大統領について「混乱を引き起こし、国家を分断し、真実でないことを口にする」とし、トランプ氏が出馬しても勝利させてはならない、と述べた。
クリントン元米国務長官が産経新聞などに語った主な内容は以下の通り。
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露の侵略「民主主義の将来に関わる」
-ロシアによるウクライナ侵略をどうみる
「日本を含む先進7カ国(G7)は事態に的確に対応し、ロシアやプーチン(大統領)らに制裁を科してきた。隣国への侵略は正当化されない。(侵略は)世界の民主主義の将来に関わる問題だ。21世紀の今日、ロシアがウクライナにしたように侵略できるとなれば、ほかの攻撃的な国々や指導者への危険なシグナルとなる。次は日本がG7を率いることを知っている。日本政府や首相がウクライナの人々を支援していることを評価する」
-ウクライナ市民に対し、できることは
「個人がオンライン上で食料支援などを行う団体を探すことができる。ゼレンスキー大統領の妻は妊婦や乳児のための医療物資支援を求めている」
-ロシアが核兵器を使う可能性について
「(使用が)差し迫っていると思わない。脅しだ。大事なのは私たちが強力に手を携えること。(プーチン氏が使用すれば)バイデン米大統領が言うように、ロシアに破滅的な事態がもたらされるということを鮮明にすることが大事だ」
-世界の指導者としての米国をどう評価する
「バイデン氏を誇りに思う。(トランプ)前大統領は衝動的で、彼が言ってきたこと、してきたことは世界を不安定にした。バイデン氏は手堅く対処し、他国と手を携えやってきた」
-中国やロシアが軍事演習をし北朝鮮がミサイルを発射している
「日米関係は強力だ。ただ、もっと防衛面で調整が必要で、軍事演習などを通じ、結束しているとのメッセージを送るべきだ」
-中国は台湾に軍事的圧力をかけている
「中国の攻撃的な言辞に懸念を抱いている。日本がエネルギーから重要物資の輸送に至るまで、どれほど台湾近海に依存しているか理解している。米国と日本は台湾を支援する必要がある。海上輸送の妨害や、台湾への侵攻、民主主義の破壊をしようとするならば、『結果』が伴う-とのシグナルを送らなければならない。日本と米国は調整し、中国の攻撃的な動きを阻止することが重要だ」
-来月、米国では中間選挙がある
「どちらの党の大統領がホワイトハウスにいたとしても、中間選挙で有権者はその党に投じない傾向にある。夫(ビル・クリントン元大統領)の1994年、オバマ元大統領の2010年もそうだ。『歴史上の先例』といえる。多くの共和党候補者は過激だ。彼らの提案は、人々が直面する現実から乖離(かいり)している」
-24年大統領選に出馬する可能性は
「ない。良い仕事をすると私が思う人を支持する。バイデン氏が再度出馬するなら私は支持する」
-トランプ氏が再出馬に関心を示している
「彼は米国政治に混乱を引き起こし、国家を分断し真実でないことを口にしてきた。彼が出馬しても、かつて支持した人々がどれだけ支持するのか。米大統領は世界を一つに束ねることもあれば、バラバラにすることもあり得る重要な存在だ。米国だけでなく、世界の舞台に登場させないことが重要だ。現実、事実、証拠を受け入れなければ指導者にはなれない。新型コロナウイルスへの対処、気候変動の否定、選挙に関するウソ…。これらは本当にトラブルをもたらした。彼が大統領選に出馬しても敗北することを望む」
筆者:黒沢潤(産経新聞)
動画記事(FNNプライムオンライン)
ヒラリー・クリントン氏 三田キャスター対談 元国務長官・大統領候補