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皇室をいただく国柄のありがたさを、改めて感じるご訪問だった。
天皇、皇后両陛下が10月23日開催の国民文化祭と全国障害者芸術・文化祭開会式に臨席するため、即位後初めて沖縄県を訪問された。
22日には先の大戦の激戦地、糸満市摩文仁(まぶに)にある平和祈念公園を訪れ、戦没者を慰霊された。
「沖縄戦の悲惨さや、私たちが現在享受している平和のありがたさを思い、改めて平和の大切さを心に刻みました」
同日夜、側近を通じて公表されたご感想である。お言葉を、深くかみしめたい。
昭和47年に沖縄が本土に復帰し、50年となった。この節目の年に訪問することを、両陛下は強く望まれていたという。苦難の歴史を歩んだ沖縄の、本土に対する思いはときに複雑だ。それらを解きほぐしたのが皇室だった。
上皇、上皇后両陛下は皇太子時代も含め、11回にわたり沖縄を訪問して県民の気持ちに寄り添われた。そのご功績を、天皇、皇后両陛下も継ごうとされている。
平和祈念公園で天皇陛下からお言葉をかけられた戦没者遺族のひとりは「沖縄に心を寄せてくださった」と話した。
県民の多くも、皇室への敬愛の念をあらわにした。両陛下が向かわれる先々の沿道には人だかりができ、車列に日の丸の小旗が打ち振られた。
両陛下は減速した車から、何度も歓声にこたえられた。那覇市では奉迎パレードが行われた。
玉城デニー知事も「県民を挙げて歓迎申し上げます」と両陛下を出迎えた。米軍基地問題などで国との対立が報じられる沖縄だが、皇室が導く融和の力は大きい。
宿泊を伴う地方ご訪問はおよそ3年ぶりだった。天皇陛下は即位後初の会見で「多くの人々と触れ合い、直接話を聞く機会を大切にしていきたい」と述べられたが、新型コロナウイルス禍のために見合わされていた。
ようやく感染拡大に収束の兆しが見え、お気持ちを実行される環境が整ったのだろう。10月1日には栃木県で開かれた国民体育大会に日帰りで臨席し、地方ご訪問を再開された。皇后陛下が活動される場も増えている。
国民の絆を強める両陛下の地方ご訪問がいよいよ本格化する。そのことを心から喜びたい。
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2022年10月25日付産経新聞【主張】を転載しています