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世界中で名画の受難が続いている。
いずれも、環境団体、環境活動家を名乗る者らによる歪(ゆが)んだ正義による身勝手な破壊行動であり「エコ・テロリズム」と呼ばれる。
彼らは「絵画と地球の人々の命を守ることと、どちらが大切なのか」などと主張するが、どちらも大切であり、比べられるものではない。
地球環境の方が大事だとしても芸術を毀(き)損(そん)する行為を正当化することはできない。絵画の方が大事だと仮定しても地球の破壊が許されないことと同じである。
彼らの主張がどうあれ、決して許すことができない、明確な犯罪行為である。
10月23日、ドイツの環境活動家がポツダムの美術館で、クロード・モネの「積みわら」にマッシュポテトを投げつけた。14日には、ロンドンの英国立美術館で、ゴッホの「ひまわり」に缶詰のトマトスープがぶちまけられた。
5月にはパリのルーブル美術館で、レオナルド・ダビンチの「モナリザ」にケーキが投げつけられた。7月にはイタリア・フィレンツェの美術館で、ボッティチェリの「春」に2人の活動家が接着剤で手を貼り合わせた。
いずれも絵画そのものは保護ガラスに守られ破損を免れたが、それで良しとできる行為ではない。活動家らは器物損壊などの疑いで連行された。
テロリズムは例えば、こう定義される。
「政治上その他の主義主張に基づき、国家若(も)しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊する行為」(特定秘密保護法)
環境問題に関する自らの主義主張を広く訴えることを目的とする彼らの破壊活動は、紛れもないテロリズムである。
「エコテロ」の破壊者は多くが若者であり、ネット上などで一部の支持を受けているようだ。
安易な同調は、必ず次の犯行を呼ぶ。テロリストの蛮行を放置してはならない。
活動家は、知るべきである。テロが広範囲の同意を得ることはできない。自らの主義を社会から遠ざける結果しか生まない。主張の正義や正当性に自信があるなら、テロに頼らず、堂々と言論で戦うべきだ。
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2022年10月30日付産経新聞【主張】を転載しています