COP27

UN Executive Secretary of Framework Convention on Climate Change Simon Stiell speaks at the closing plenary at the COP27 climate summit in Red Sea resort of Sharm el-Sheikh, Egypt, November 20, 2022. REUTERS/Mohamed Abd El Ghany

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エジプトで開かれていた国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が閉幕した。

 

途上国側が「損失と被害(ロス&ダメージ)」に特化した新たな基金の創設を求める声を上げたことで交渉は難航したが、会期終盤での先進国側の譲歩によって基金の創設が決まった。

 

一応の合意には達したが、資金源や被害程度の認定など運用の詳細は、来年のCOP28に委ねられた。この詳細部分こそが肝要であり、基金の成否が左右されることを指摘しておきたい。

 

COP27
COP27閉幕式=11月22日、エジプト・シャルムエルシェイク(ロイター)

 

「損失と被害」は、今COPで初めて正式議題となったテーマである。近年の自然災害は、先進国が排出してきた二酸化炭素による温暖化に起因するとして、途上国が自然災害に対応する資金を被害者の立場で求めた働きかけだ。

 

先進国側は2009年のCOP15で年間1千億ドル(約14兆円)の援助を約束しているが、満額に達した年はない。そこに別口の「損失と被害」基金である。エネルギー価格の高騰で世界経済が低迷している中、先進国だけでの負担は到底、不可能だ。

 

今COPで中国は途上国とともに基金創設の圧力を強めたが、資金面での貢献には消極的であったと伝えられる。

 

新興国として成長を遂げる中国とインドの二酸化炭素排出量は世界の約30%と約7%を占める。今や米国の2倍に達し、世界一の排出国・中国が応分の負担に「頰かぶり」を決め込もうとしているなら不誠実の極みである。

 

COP27
ニュースケール社のSMR発電所の完成予想図(全景)

 

世界のエネルギー需要と二酸化炭素の排出は、多くの途上国での増加が見込まれる。再生可能エネルギーに依存するだけでは、気温上昇を1・5度に抑えようとする目標の達成は困難だが、ひとつの可能性が残されている。

 

原子力発電の利用である。COPの合意に「低排出エネルギー」の活用が加わったことは注目に値する。原子力は地政学的な緊張が増す国際情勢下で、エネルギーの確保と脱炭素化に資する安定電源だ。開発が進む革新炉の一種である小型モジュール炉(SMR)は安全性に優れ、規模の面でも途上国に向いている。

 

国際原子力機関(IAEA)も温暖化防止に意欲的だ。日本の技術力を発揮できる分野でもある。まずは国内の既存原発の再稼働で排出削減を進めたい。

 

 

2022年11月22日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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