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贈収賄事件に続く談合捜査である。東京五輪・パラリンピックをおとしめる汚れた構図の広がりは果てしない。
一方で2030年冬季五輪招致には札幌市が手を挙げている。一連の事件の総括も反省もないまま、スポーツの祭典を呼ぶ資格はあるのか。
東京と札幌では大会を開催する主体が異なるとの言い訳は通らない。大会の一翼を担うのは同じ日本オリンピック委員会(JOC)であり、東京大会の組織委員会会長だった橋本聖子参院議員は札幌五輪招致の国会議員連盟会長でもある。
汚職と談合の2つの事件に関わる広告大手の電通が札幌五輪にどう関わるかについても、何ら具体的な説明はない。
東京地検特捜部と公正取引委員会は、独禁法違反(不当な取引制限)の疑いで、電通とイベント制作会社セレスポを家宅捜索した。大会組織委で事業発注に関わった担当幹部の自宅も捜索した。
疑いが持たれているのは、テスト大会の計画立案などの一般競争入札で、電通など9社と1つの共同事業体が落札した。契約総額は5億円余だが、9社と共同事業体は本大会の競技場運営についても入札を伴わない随意契約で担当した。いわば巨額利権の入り口を分け合った格好だ。随意契約の経緯についても検証すべきである。
家宅捜索を受けた組織委「大会運営局」の幹部には受注調整に関与した疑いがある。
組織委の役員や職員は東京五輪特別措置法の第28条で「みなし公務員」と規定されており、官製談合の構図がみえる。一方で組織委には多くの電通社員が出向しており、発注側、受注側の双方で電通が中心的役割を担うお手盛り談合の疑いもある。
談合とは、入札参加業者の話し合いで落札業者を決めてしまうことで、自由競争による価格よりも落札額が高くなれば、不当に出費が増えることになる。東京五輪に関わる出費には、国や東京都の税金が含まれる。
何より罪深いのは、五輪、パラリンピックを通じて各国選手が演じた素晴らしいドラマの数々を、汚濁にまみれさせたことだ。
国や都、スポーツ団体は五輪を食い物にする悪(あ)しき構図を白日の下にさらし、実効性を伴う決別を宣言すべきである。札幌に冬季五輪を呼ぶのは、その後だろう。
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2022年11月26日付産経新聞【主張】を転載しています