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東南アジア諸国連合(ASEAN)が11月にカンボジアで、対面では3年ぶりとなる首脳会議や域外国も交えた関連会合を相次ぎ開催したが、焦点であるミャンマーの事態打開で成果を示すことはできなかった。
ASEANは、クーデターで権力を掌握した国軍に、暴力行為の停止や対話の開始など5項目の履行を求めている。首脳会議の議長声明は「(国軍が)履行の意思を欠き、深く失望した」とも指摘した。
当事者である国軍のやる気がないとは深刻な事態である。放置すればミャンマーの国際的な孤立は深まる。国内で抗議を封じ込められて不満を募らせる民主派と、国軍との衝突の危険も高まろう。
問題解決へのアプローチを見直すべきである。ASEANは主だった会合への国軍関係者の出席を認めていないが、より強いペナルティーを科す行動が必要だ。
ASEANの議長国は来年、カンボジアからインドネシアに引き継がれる。地域大国、民主主義国家として、問題解決に強い指導力を発揮してほしい。
ASEAN会合に続いて、インドネシアで20カ国・地域(G20)、タイでアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が対面で開催された。2国間会談も活発に行われ、関係が冷え込む日韓にも首脳同士の「正式会談」に格好の場が提供された。
大型国際会議のためのインフラが整っているのは、ASEANの主要都市やリゾート地の強みであり、コロナ禍の今回は、ことさらそれが際立った。
世界はロシアのウクライナ侵略などの難問を抱え込んでいる。恵まれた自然環境のもとで話し合える場は、それ自体が貴重だが、ASEANがその役割で満足することがあってはなるまい。
東南アジアでは近年、米中が激しい綱引きを演じている。地域の経済や安全保障でASEANが主導権を握らなければ、加盟各国は米中対立に一層翻弄されよう。
ASEAN首脳会議では、東ティモールの加盟を認めることで合意した。加盟が実現すれば、1999年のカンボジア以来で、11カ国体制となる。
重要なのは、ミャンマーの政治危機など地域の問題解決をASEAN主導で解決することだ。「国軍に失望」という一片の声明で済ませてはならない。
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2022年11月27日付産経新聞【主張】を転載しています