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高額献金など世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を巡る被害者救済法が成立した。岸田文雄首相は記者会見で、着実に取り組みを進める考えを示した。幅広く救えるよう万全を尽くしてもらいたい。
救済法は与野党協議で修正を重ねたが、実際に運用していく中で、不十分な点も出てこよう。施行後3年をめどとした見直し規定は、2年に短縮された。実効性の確保に向けて不備があれば、2年を待たずに速やかに見直すべきだ。
被害者にとって使いやすく、法人に対しては不当な勧誘行為の抑止力がより強く働く法律に改善していくことが肝要である。
救済法は霊感で不安をあおるなどの不当な勧誘行為で、寄付する人を困惑させることを禁止した。困惑して寄付した場合は取り消すことができる。
もっとも、教義を刷り込まれた信者は、困惑するどころか、義務感や使命感で献金する場合が多いとされる。首相は国会審議で「旧統一教会の献金被害の多くは、自発的に見えても困惑させられていると考えている。当時困惑していたと主張、立証することで取り消し得る」と答弁した。
「自主的に寄付した」という念書にサインさせられた場合は、むしろ違法性を示す要素となり、損害賠償請求が認められやすくなる可能性がある、との認識も示している。政府は、被害者が救済法を効果的に活用できるようにするため、法の解釈について周知徹底すべきだ。
修正協議では、法人や団体が寄付の勧誘を行う際に配慮しなければならない配慮義務規定について、「十分に配慮」と表現を強めた。個人の自由な意思を抑圧し、適切な判断が困難な状況に陥ることがないようにすることなどを求めている。マインドコントロールを念頭に置いたものだが、抽象的で分かりにくい。国会で採択された付帯決議では、具体例の提示を求めた。政府は速やかに具体例を公表してほしい。
臨時国会は閉会した。審議では寄付に関する議論が中心となった。親が信者の「宗教2世」への信仰の強制や、教義に基づく虐待行為などの問題もある。これらの課題は、来年の通常国会で議論したらどうか。救済の取り組みはこれからであることを、政府や与野党は肝に銘じるべきだ。
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2022年12月11日付産経新聞【主張】を転載しています