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先進7カ国(G7)メンバー国歴訪中の岸田文雄首相は1月11日午後(日本時間同日夜)、英国・ロンドンのロンドン塔でスナク首相と会談し、自衛隊と英軍が共同訓練などで相互訪問する際の手続きを簡素化する「円滑化協定」に署名した。イタリアを加えた3カ国による次期戦闘機の共同開発についても改めて連携を確認し、安全保障面の協力を強化する。
岸田首相は会談で、「(日英は)特別な戦略的なパートナーとして国際社会の課題に取り組んでいく責任を担っている」と訴えた。スナク氏は日本が昨年末に改定した国家安全保障戦略を歓迎。日本が今年のG7議長国であることに触れ、「私たちの協力関係はこれまで以上に重要なものとなる」と述べた。
日本は同盟国の米国と日米地位協定を結んでおり、円滑化協定はオーストラリアに続き2カ国目。自衛隊と英軍が、互いに相手国を訪問する際の武器持ち込みなどの手続きを事前に定めておくことで共同訓練などのたびに調整する必要がなくなる。
「最も重要な防衛協定」
岸田、スナク両首相が締結した円滑化協定は、日本にとって「準同盟国」としての英国との安全保障協力の深化を象徴するものだ。外交安保の基軸が日米同盟であることに変わりはないが、ロシアのウクライナ侵攻が示したように、有事に備えるためには同盟・同志国との連携が不可欠になる。
「日本と協定を結ぶ欧州で最初の国になる」
英政府が署名にあたって11日、発表した声明にはこう記され、日英同盟を締結した1902年以来、両国にとって最も重要な防衛協定だと強調した。
日英同盟は当時、ロシア帝国の極東進出に対抗したものだった。現在、インド太平洋地域で中国の軍事的脅威が高まる中、両国が再び連携強化に動いている。
進行中の次期戦闘機開発だけでなく、2013年に軍事などに関する機密情報の交換を可能にする情報保護協定、17年には自衛隊と英軍が物資を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)を締結した。
日本も英国も米国の同盟国であり、英国は米国、オーストラリアと安保枠組み「AUKUS(オーカス)」を構成する。日本は同じ地域で中国の脅威に直面する「準同盟国」のオーストラリアといち早く安保協力を推進してきた。
「力による一方的な現状変更やその試みに対抗し、我が国の安全保障を確保するためには、同盟国のみならず、1カ国でも多くの国々と連携を強化することが極めて重要である」
昨年末に決定した「安保3文書」の「国家防衛戦略」はこう指摘した。
政府はウクライナ侵攻で注目された英国の情報収集能力や国際世論形成能力なども意識する。かつての同盟から1世紀を経て、日英関係は新たな段階に入ろうとしている。
筆者:田村龍彦(産経新聞)