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警察庁の露木康浩長官は会見で、関東地方を中心に相次いだ広域強盗事件について「国民の不安感の払拭に努めたい」と述べ、「首謀者を解明、摘発することが重要だ」と説明した。
これを受けて、同庁の渡辺国佳刑事局長は都府県警の刑事部長らを前に「国民の不安が高まっている中、警察の真価が問われている」と訓示した。
残忍で凶悪な強盗団を野放しにしていては、おちおち寝てもいられない。これまでの捜査で「ルフィ」を名乗る指示役は、フィリピンの入管施設に拘束されている男らであるとみられ、警視庁が特殊詐欺事件に絡む窃盗容疑などで4人の逮捕状を取得している。
フィリピン当局の協力を求めて早期に容疑者の身柄を国内に移送し、犯罪グループの全容を解明、壊滅に追い込んでほしい。
一連の犯行グループによるとみられる強盗事件は昨年10月以降、少なくとも8都県で14件発生しており、これまでに10代から30代の30人以上を逮捕している。
東京都狛江市で90歳の女性が殺害された強盗殺人事件以外にも、強盗殺人未遂1件、強盗致傷9件が含まれる。理不尽な暴力を前に被害者は、なすすべもない。指示役は実行犯に「殺してもいい」と伝えていたとされる。
指示役らが拘束されているマニラ郊外の収容所では賄賂による不正が横行し、内情を知る男性は「悪人の楽園」と呼んだ。
賄賂の多寡によってスマートフォンやパソコンを使用することができ、収容所内でオンラインカジノの運営や、特殊詐欺を差配する者もいたらしい。広域強盗団も収容所内から「テレグラム」などの通信手段で指示を受け取っていたとみられている。
日本とフィリピンの間には犯罪人引き渡し条約がなく、フィリピン側に強制送還を要請するしかないが、収容者らは新たな告訴人を買収することで訴訟案件を作り、送還を逃れてきたとされる。
まずは容疑者を「悪人の楽園」から引きずり出さなくては捜査が進まない。警察の総力に加え、外交当局も早期の送還に向けて力を尽くしてほしい。
個人情報を把握された実行犯への脅し役など、首謀者グループは国内にもいたはずだ。犯罪の芽を根こそぎ絶つためには、指示役らへの直接捜査が欠かせない。
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2023年1月31日付産経新聞【主張】を転載しています