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危機に陥った現代人の実相を描いた小説で知られ、日本人で2人目のノーベル文学賞を受賞した大江健三郎(おおえ・けんざぶろう)氏が3月3日、老衰のため死去した。88歳だった。愛媛県出身。葬儀は家族葬で行った。後日、お別れの会を開く。長男は作曲家の大江光(ひかり)さん。妻は映画監督の故・伊丹十三の妹。
愛媛県喜多郡大瀬村(現、内子町)に7人兄弟の三男として生まれた。松山東高校を経て、昭和34年に東大文学部仏文学科を卒業。大学在学中の33年、短編小説「飼育」で芥川賞を受賞。39年、実生活をモチーフに障害児を持つ若い父親の心情を描いた「個人的な体験」で新潮社文学賞を受賞した。
その後も旺盛に小説を発表し、42年「万延元年のフットボール」で谷崎潤一郎賞を、48年「洪水はわが魂に及び」で野間文芸賞、58年には「新しい人よ眼ざめよ」で大佛次郎賞を受賞。59年には短編「河馬に嚙まれる」で川端康成文学賞を、平成2年に「人生の親戚」で伊藤整文学賞を受けるなど、国内の主だった文学賞を受賞してきた。
6年にノーベル文学賞を受賞。受賞講演「あいまいな日本の私」が話題となった。
ほかの作品に、最初の長編「芽むしり仔撃ち」、政治団体から脅迫を受けた「セヴンティーン」や、「ピンチランナー調書」「同時代ゲーム」「『雨の木(レイン・ツリー)』を聴く女たち」「新しい人よ眼ざめよ」「燃えあがる緑の木」など多数。評論も積極的に執筆し、「ヒロシマ・ノート」「沖縄ノート」、講演集「核時代の想像力」などがある。
12年、米ハーバード大名誉博士号を授与され、14年には仏レジオン・ド・ヌール勲章コマンドゥールを受章した。