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インドを訪問した岸田文雄首相がモディ印首相と会談し、法の支配に基づく国際秩序堅持へ連携することで一致した。
岸田首相は5月に開催される先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に今年の20カ国・地域(G20)議長国のインドを招待し、モディ首相は出席の意向を示した。
インドは14億人の人口を抱える世界最大の民主主義国で、経済発展は著しい。今回の首脳会談を機に、日印両国は国際秩序を守る同志的関係を一層強化していくべきである。
世界は、G7など西側諸国と、中国・ロシアという専制主義諸国が対峙(たいじ)している。インドはロシアと伝統的な友好関係にある。中露両国とは新興5カ国(BRICS)の枠組みを有している。非同盟を長く掲げ、「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国へ影響力を持つ。
両首脳は、ウクライナを侵略するロシアや覇権志向の中国を名指しで問題視することはなかった。それでも、インドが、法の支配などに基づく国際秩序の守り手として行動するようになることは意義がある。
日本は、インドと他のG7諸国との懸け橋としての役割も担うことができる。岸田首相は、安倍晋三元首相とモディ首相の密接な関係を引き継ぎ、インド重視の外交を続けてもらいたい。
林芳正外相は国会審議を理由にインドで開かれたG20外相会合への出席を見送り、インド側の不興を買った。インド軽視と見られる失策は繰り返してはいけない。
岸田首相は会談後の講演で「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想実現に向け、新行動計画を表明した。インドを発信の舞台に選んだのは適切だ。
岸田首相は「国際社会が歴史的転換期にある」として、FOIPを発展させる重要性を強調した。新行動計画は、主権や領土の一体性の尊重を訴え、力による一方的な現状変更への反対を掲げた。ロシアのウクライナ侵略や、中国による国際法無視の強引な海洋進出、台湾に対する軍事的威嚇が念頭にある。
さらに、政府開発援助(ODA)の戦略的活用も打ち出した。いずれも妥当で、岸田首相は日米豪印4カ国(クアッド)を含めインドと連携しつつ、新行動計画を着実に実行すべきである。
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2023年3月21日付産経新聞【主張】を転載しています