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中国の習近平国家主席が4月26日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談した。ロシアが昨年2月、ウクライナに全面侵攻して以降初めてのことである。
習氏はこの中で「速やかな停戦と平和回復のために自ら努力を尽くす」と述べ、和平の仲介に意欲を示した。中国政府の特別代表をウクライナに派遣する方針も明らかにした。
しかし、和平を仲介するという中国の姿勢は全く信用できない。中国は終始、この侵略戦争でロシアに寄り添っており、公正な和平を実現するつもりなどない。
ゼレンスキー政権も重々承知している。それでも電話会談を行ったのは、中国が武器支援などでさらにロシアに肩入れしないよう、習氏との接点は持っておいた方がよいとの考えからだ。
中国は2月下旬、12項目から成る和平提案の文書を発表した。一方的に侵略しているロシアを全く批判せず、双方に停戦を求めるという偽善きわまる代物だ。ロシア軍の撤退こそが和平の前提であることを忘れては困る。
習氏は3月にモスクワを訪れ、プーチン露大統領と会談した。国際刑事裁判所(ICC)がプーチン氏に戦争犯罪容疑で逮捕状を出した直後の訪問だった。
4月18日には中露の国防相がモスクワで会談し、軍事協力の拡大で一致した。4月21日には中国の駐フランス大使が、ウクライナなど旧ソ連諸国の主権に疑義を呈する発言をして猛批判を浴びた。
そもそも中国は、欧米が輸入禁止としている露産石油を大口購入し、電子部品などの軍民両用品をロシアに供給してその継戦能力を支えている。中国製の弾薬がウクライナ侵略戦争で使われたとも報じられている。
習政権が和平仲介をアピールするのは、対中世論を和らげて米欧日の足並みの乱れを誘ったり、国際社会での自らの存在感を高めたりする思惑からだろう。
ゼレンスキー氏は習氏に、ロシアへの軍事協力をやめるようクギを刺した。「領土の妥協による和平はあり得ない」とも言明した。ウクライナはロシアの戦争犯罪が裁かれることも求めている。
現状では、ロシアを軍事的に追い込むことでしか公正な和平の道筋をつけられない。ウクライナが準備する反転攻勢を国際社会はしっかりと支えるべきだ。
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2023年4月30日付産経新聞【主張】を転載しています