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中国共産党政権が学生らの民主化要求運動を武力で弾圧し、多数の犠牲者を出した天安門事件から6月4日で34年となった。
中国外務省報道官は「すでに結論が出ている」と述べ、民主化運動を「反革命暴乱」として弾圧を正当化する見解を変えなかった。断じて容認できない。
改革派の胡耀邦元総書記が1989年4月に死去したことを機に、学生らが天安門広場で求めたのは「民主」であり「自由」だった。その学生や市民に、中国人民解放軍が、6月3日夜から4日未明にかけて無差別発砲を繰り返し、平和的な運動を武力で押さえ込んだのは歴史的事実である。
中国当局は事件の死者数を319人としているが、少なすぎるというのが一般的な見方だ。当時の英外交文書は「1万人以上」と推計している。
中国は責任を認め、被害者家族らに謝罪すべきだ。なぜ無辜(むこ)の市民を殺戮(さつりく)したのか。真実を自国民に説明すべきである。
香港では中国への返還後も一国二制度の下、事件の追悼活動が認められ、毎年6月4日にはビクトリア公園で大規模なろうそく集会が行われていた。しかし、香港国家安全維持法(国安法)が2020年に施行されて以降、事実上禁止された。犠牲者の遺品などを展示した天安門事件の記念館も閉鎖に追い込まれた。
「一国二制度は維持されている」と中国当局が主張するのなら、香港での追悼活動を認めるべきではないか。追悼活動の中心地は香港から海外に移っている。米ニューヨークに犠牲者の遺品などを集めて展示する施設が開設され、一般公開が始まる。
国際人権団体、ヒューマン・ライツ・ウオッチは1日の声明で、死者全員の氏名の公表など真相究明を改めて求め、中国政府に責任を認めるよう訴えた。国際社会に対しても、対中制裁などで協調した対応をとるよう促した。
天安門事件後、率先して対中制裁を解除し、事件で窮地に陥っていた中国共産党政権に手を貸したのは日本政府である。人権を軽視した恥ずべき対応だった。
天安門は過去の悲劇ではない。真実を覆い隠すこともまた弾圧である。日本は、当時の対応への反省を踏まえ、今も続く「弾圧」を中国が直ちにやめるよう、米欧と結束して圧力をかけるべきだ。
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2023年6月4日付産経新聞【主張】を転載しています