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The AIST technology leak was covered on the front page of The Sankei Shimbun on June 16.

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フッ素化合物合成技術の研究データを中国企業に送信していたとして、不正競争防止法違反の疑いで、国立研究開発法人「産業技術総合研究所(産総研)」の研究員である中国籍の権恒道容疑者が警視庁公安部に逮捕された。個人的には、産総研の方々と中国への情報流出リスクについて話していたところだったので、このような事件が生じたことに正直驚いた。

 

警視庁=東京都千代田区

 

報道によると同容疑者は国防7校と呼ばれる南京理工大学の出身であり、同じく国防7校の一角である北京理工大学の教員も兼任していたという。国防7校とは、中国人民解放軍とのつながりの深い大学群の総称であり、近代兵器の研究開発で重要な役割を果たしている。米国政府は国防7校すべてを取引禁止リストに掲載、米国の企業や大学はこの大学群との共同研究開発は原則禁じられている。

 

警視庁神田署に入る権恒道容疑者=6月15日(共同)

 

しかし日本においては、大学の研究が軍事転用されるという意識が低いため、日本の国公立・私立大学が国防7校との共同研究開発を行い、人事交流も実施している。そうなるとわれわれのあずかり知らぬところで、日本から中国への情報流出も生じているのだろう。今回流出が確認された産総研は経済産業省所管の研究機関であり、同容疑者はそこに20年以上勤務していたというから、その実態は深刻だ。なぜ国防7校とつながりのある人物を国の機関が雇用し、経歴をきちんとチェックしなかったのか。現在、政府が主導して民間企業などにセキュリティー・クリアランス制度を導入する検討が進んでいるが、本件のような事案を繰り返さないためにも早急に制度を確立すべきであろう。

 

経済産業省=東京都千代田区霞が関

 

他方、この件については、各紙での扱いが分かれている。16日の各紙面を見ると、産経と読売は1面で事件を大きく報じた。日経と朝日、毎日は社会面で報じているが、最も扱いが小さかったのは朝日で、事実を淡々と報じたのみである。紙媒体に目を通すと、各紙がどのようにニュースに軽重をつけているかがうかがい知れて興味深い。「人民日報」など中国の公開情報分析に長(た)けた平松茂雄氏は、「ネットでは記事の重要度がわからない。新聞は限られた紙面の中に情報を選んで載せるので、なぜ第一面、第二面、下の方、小さい記事にしたのかには編集者なりの理由がある」と書いておられた。今や主流となったネットニュース上では、産経も朝日も同じように今回の事件を報じているような印象だが、紙媒体だと各紙が今回の件をどれぐらい深刻視しているかが見えてくる。

 

筆者:小谷賢(日本大教授)
昭和48年、京都市生まれ。京都大大学院博士課程修了(学術博士)。専門は英国政治外交史、インテリジェンス研究。著書に『日本インテリジェンス史』など。

 

 

2023年6月25日付産経新聞【新聞に喝!】を転載しています

 

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