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日本の夏に欠かせない花火大会。打ち上げ花火は、江戸時代の享保18(1733)年に隅田川で行われた「水神祭」が最初とされる。飢饉(ききん)や疫病が流行したため、その死者たちの慰霊や悪疫退散のために始まった。現在の日本三大花火大会は、秋田県の「大曲の花火」、新潟県の「長岡まつり大花火大会」、茨城県の「土浦全国花火競技大会」(11月開催)で、これに全国でも有数の規模を誇る長野県の「諏訪湖祭湖上花火大会」などが続く。
秋田・大曲4年ぶり
「大曲の花火」として知られる全国花火競技大会は8月26日、秋田県大仙市の雄物川河川敷を主会場に4年ぶりに通常開催される。
95回目の大会では計1万8千発を打ち上げ、全国の花火業者28社が技を競う。主会場に約10万の観覧席を設け、4年ぶりに約100の露店が出店。実行委は周辺も含めた観客を新型コロナウイルス禍前と同じ75万人と見込む。
大会は明治43年に神社の祭礼の余興で行った「奥羽六県煙火共進会」が始まり。花火文化振興と煙火技術向上を目的に毎夏開催してきたが、コロナ禍で令和2、3年と延期。昨年は3年ぶりに開催したが、露店の出店を見送った。
「大曲の花火」実行副委員長で競技に参加する小松煙火工業の小松忠信社長は「今年は本来のにぎわいが戻る中で最高の技術を披露できる。花火師には何よりの喜び」と語る。
大会延期期間中、大仙市は花火業者らへの支援を強化し、実行委もクラウドファンディングで集めた1800万円で、全国の花火業者の地元でサプライズ花火を打ち上げるなどの支援を展開した。
「花火の原材料費はコロナ禍前の2倍以上に急騰したが、それを乗り越えて余りある大会にしたい」と小松社長は意気込む。
新潟は2日で2万発
長岡まつり大花火大会は8月2日から2日間、新潟県長岡市の信濃川河川敷で開かれる。同市では、昭和20年8月1日の長岡空襲で市街地の8割が焼け野原となり、約1500人の命が失われた。亡くなった人たちの慰霊や、平和への誓いなどを込めて翌21年8月に始まった「長岡まつり」がルーツだ。
全長約2キロにも及ぶ「復興祈願花火フェニックス」や、信濃川にかかる全長約850メートルの橋を使ったナイアガラ花火は圧巻の一言。直径約90センチの正三尺玉(しょうさんじゃくだま)が夜空に大輪の花を咲かせる。2日間に打ち上げられる花火は計約2万発ともいわれている。「今年も昨年と同程度の規模」(市担当者)という。
大林宣彦監督の映画「この空の花-長岡花火物語」でも取り上げられた。昨年はこの映画をテーマにした花火も打ち上げられ、河川敷で妻の大林恭子さんらが見守った。
昨年の有料観覧者数は2日間で計約28万人。今年は信濃川両岸に2日間で計32万8千席の有料観覧席が設けられる。キャンセルが出た観覧席は7月14日まで、大会公式HPの再販売サイトで購入できる。新型コロナウイルス感染症は5類に移行したが、会場内では手指消毒液の設置など最低限の感染症対策を行う。
長野、盆地で音響く
諏訪湖祭湖上花火大会(長野県諏訪市)は、湖上から国内屈指の数の花火が打ち上げられる。光の演出も素晴らしいが、四方を山に囲まれた盆地だけに「内臓にまで響いてくる」(市職員)という音と衝撃の大きさも特徴となっている。
終戦まもない昭和24年、市民が明るい希望を持つことを願い、第1回の花火大会が8月15日に行われた。総費用は18万6千円。1時間半にわたる打ち上げを5万人が見物したという。
その後、規模はしだいに拡大していくが、令和2年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止となった。3年と4年は15日間に分散して開催し、今年は4年ぶりの盛大な一挙開催となる。量よりも内容をみてほしいと今回から打ち上げ発数は公表しないが、元年には約7600万円の協賛金が集まり、国内最多級の約4万発が打ち上げられている。
8月15日の同大会だけでなく、前後の約1カ月間は「諏訪湖サマーナイト花火」と銘打って毎晩約10分間の打ち上げが催される。夏の諏訪湖を訪れた際は、山と湖が演出する特別な花火を見逃さないようにしたい。
筆者:八並朋昌、本田賢一、原田成樹(産経新聞)