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ジャニーズ事務所の性加害問題を巡り、国連人権理事会の作業部会が会見し、「同社のタレント数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという、深く憂慮すべき疑惑が明らかになった」と述べた。
国際社会に向けて発信された国辱的な「事件」である。これ以上、この問題を放置してはならない。
まず深く反省すべきは産経新聞をはじめとするメディアである。作業部会は「日本のメディア企業が数十年にわたり、ハラスメントのもみ消しに加担したと伝えられる」と指摘した。
ジャニー喜多川氏の性加害行為を認定した平成15年の東京高裁判決や複数回にわたる週刊誌報道を多くのメディアが座視してきたのは事実である。
英BBC放送による報道や国連作業部会による外圧で、ようやく動き出した現状には大いに恥じ入るべきだろう。この機に変わらなくてはならない。
それは、当のジャニーズ事務所や芸能界、政府にとっても同様である。
ジャニーズ事務所は「再発防止特別チーム」を設置したが、作業部会は特別チームによる調査は「透明性と正当性に疑念が残る」と述べた。
そもそも同社は経営者が動画と文書で謝罪したのみで、この問題についての会見さえ、いまだに開いていない。
経営者が自らの口で責任の所在を明らかにし、数々の疑問に答え、再発防止と被害者救済について語るべきである。
作業部会は、ジャニーズ事務所の問題以外にも調査対象を広げることを明らかにしている。映画・演劇界でも深刻な性加害問題が明らかになっており、旧態依然の閉鎖社会における上下関係がその温床となっている。ジャニーズ事務所の性加害は、一社だけの問題ではない。
政府はこの問題を受け、子供や若者の性被害防止に向けた緊急対策を決定し、男性・男児に特化した相談窓口の新設を盛り込んだ。一歩前進といえるが、作業部会はジャニーズ性被害の被害者について主体的に救済するよう政府に求めている。
作業部会は来年6月をめどに報告書を人権理事会に提出し、政府に問題点の改善を促す方針という。このまま政府が手をこまねいていれば、報告はより深刻なものとなる。問題の放置は最悪の結果を招く。
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2023年8月8日付産経新聞【主張】を転載しています